タンドスピロンクエン酸塩とは~:Tandospirone Citrate

タンドスピロンクエン酸塩のまとめ・特徴

  • タンドスピロンクエン酸塩は、『非ベンゾジアゼピン(BZD)系』とも呼ばれ、BZD系の短所を補うものとして開発された薬剤で、心身症が原因の不安・緊張・抑うつ・睡眠障害および、自律神経失調症や神経症における抑うつ、恐怖などに適応があります。
  • ~BZD系薬の欠点だった、依存性が無く、筋弛緩作用や鎮静作用による有害作用も認められず、極めて安全性の高い薬剤で、アルコールとの相互作用も認められません。
  • セロトニン5-HT1A受容体にのみ作用する薬で、【部分作動薬=パーシャルアゴニスト】と呼ばれます。
  • ~大脳辺縁系に高密度に分布する、【5HT1A受容体】を選択的に刺激し、セロトニン神経系の神経活動を抑制することによって、抗不安作用と抗うつ作用を示します。
  • タンドスピロンクエン酸塩は住友製薬(現、大日本住友製薬)が、1996年に中国で開発しました。
  • ~薬品名は、『セディール:Sediel』です。
  • タンドスピロンクエン酸塩は、アザピロン系の抗不安薬です。
  • 代表的な抗不安薬であるベンゾジアゼピン系薬剤と比較して、筋弛緩作用や依存性などの有害事象が少なく、高齢者にも使いやすい薬です。
  • ~ただし、安全性は高いのですが、効果が出るまでに時間がかかり、通常、2~4週間が必要です。
  • また、、BZD系薬で十分な治療効果が得られなかった患者では、効果が劣るという欠点があります。
  • 性状としては、白色の結晶または結晶性の粉末となっており、酢酸には溶けやすいが、水またはエタノールには溶けにく性質を持っています。
  • 漫然と続く不安(全般性不安障害)の治療に対しては、依存も耐性も退薬症状も起こさないタンドスピロンクエン酸塩は、安全性に優れています。

2014年10月現在、日本で使用されている抗不安薬は

    1. ベンゾジアゼピン(BZD)系抗不安薬
    2. 5-HT1A受容体(セロトニン)部分作動薬
    3. SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

の3種類です。

実際には、ほとんどの『抗不安薬・向精神薬』が、【ベンゾジアゼピン系抗不安薬】です。

デパスもリーゼもワイパックスもセルシンもレキソタンも、全~部、【ベンゾジアゼピン系抗不安薬】です。

【5-HT1A受容体部分作動薬】は、「セディール」と「セディールのジェネリック薬=タンドスピロンクエン酸塩」だけです。。。

インターネット通販で買えるセディール(タンドスピロンクエン酸塩)

タンドスピロンクエン酸塩の作用部位・作用機序について

タンドスピロンクエン酸塩は、セロトニン神経系だけに選択的に作用すると言う、従来のベンゾジアゼピン系誘導体とは異なった作用機序により、抗不安作用及び抗うつ作用を示します。

タンドスピロンクエン酸塩の抗不安作用機序・仕組み

不安の発現(発生)には、大脳辺縁系に属する脳部位が大きく関与しているといわれており、視床下部、中隔野、扁桃核、海馬といった大脳辺縁系の神経回路網で不安は形成されます。

また、形成された不安は、視床下部より自律神経を介して、種々の末梢反応を誘発します。

抗うつ作用の主な発現機序は、セロトニン神経終末のシナプス後5-HT2受容体密度の低下が関与していると推定されています。

タンドスピロンクエン酸塩薬は不安を形成すると考えられる海馬等の大脳辺縁系において、その神経活動を抑制し、また、形成された不安を末梢に伝えると考えられている視床下部に対する中隔野からの不安を伝達する神経活動を抑制します。

ジアゼパムが大脳皮質、大脳辺縁系に広範に分布する BZ/GABA受容体複合体を介し、抗不安作用、筋弛緩作用等種々の薬理作用を示すのに対して、タンドスピロンクエン酸塩は大脳辺縁系に局在するシナプス後膜5-HT1A受容体に作用し、亢進しているセロトニン神経活動を抑制することにより選択的に抗不安作用を示すと 考えられます。

各種依存性調査票を用いた詳細な検討で、本剤は薬物依存性を示す訴えがジアゼパムに比べ有意に少なかった。

ま た、消化器心身症及び神経症を対象とした第 III 相試験においても、眠気等の中枢抑制性の副作用発現率が、ジアゼパムより少なかった。

タンドスピロンクエン酸塩の用途・効果効能

神経症における

  • 抑うつ
  • 恐怖

心身症における

  • 身体症候(自律神経失調症、本態性高血圧症、消化性潰瘍)
  • 抑うつ
  • 不安
  • 焦躁
  • 睡眠障害

タンドスピロンクエン酸塩の副作用

肝機能障害、黄疸、興奮、ミオクロヌス、発汗、振戦、発熱等を主症状とするセロトニン症候群、抗精神病薬、抗うつ薬等との併用、あるいは本剤の急激な減量・中止による悪性症候群、眠気、めまい、ふらつき、頭痛、頭重、不眠、振戦、パーキンソン様症状、悪夢、AST(GOT) 上昇、ALT(GPT) 上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇、動悸、頻脈、胸内苦悶、悪心、食欲不振、口渇、腹部不快感、便秘、嘔吐、胃痛、胃のもたれ、腹部膨満感、下痢、発疹、蕁麻疹、そう痒感、けん怠感、脱力感、気分不快、四肢のしびれ、目のかすみ、悪寒、ほてり(顔面紅潮、灼熱感等)、多汗(発汗、寝汗等)、BUN上昇、尿中NAG上昇、好酸球増加、※※CK(CPK)上昇、浮腫

タンドスピロンクエン酸塩:基本的な注意事項

次の患者には慎重に投与すること

  1. 脳に器質的障害のある患者
  2. 中等度又は重篤な呼吸不全のある患者
  3. 心障害のある患者
  4. 肝障害、腎障害のある患者
  5. 高齢者
  6. 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者

タンドスピロンクエン酸塩:重要な注意事項

  • 神経症においては、罹病期間が長い(3年以上)例や重症例あるいは他剤(ベンゾジアゼピン系誘導体)での治療効果が不十分な例等の治療抵抗性の患者に対しては効果があらわれにくい。1日60mgを投与しても効果が認められないときは、漫然と投与することなく、中止すること。
  • 本剤の使用に当たっては、高度の不安症状を伴う患者の場合効果があらわれにくいので、慎重に症状を観察するなど注意すること。
  • 眠気・めまい等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
  • ベンゾジアゼピン系誘導体とは交差依存性がないため、ベンゾジアゼピン系誘導体から直ちに本剤に切り替えると、ベンゾジアゼピン系誘導体の退薬症候が引き起こされ、症状が悪化することがあるので、前薬を中止する場合は徐々に減量するなど注意すること。

タンドスピロンクエン酸」の併用注意・禁忌

併用に注意すること

  • ブチロフェノン系薬剤(ハロペリドール、ブロムペリドール、スピペロン)
  • カルシウム拮抗剤(ニカルジピン、アムロジピン、ニフェジピン)
  • セロトニン再取り込み阻害作用を有する薬剤(フルボキサミン、パロキセチン、ミルナシプラン、トラゾドン)