最高血中濃度と半減期と定常状態

薬と血液の関係

薬は、消化管から体内に吸収されて、血流に乗り、目的の場所に届くと、効果を発揮します。

頭痛薬なら頭部の炎症部位に、不整脈(ふせいみゃく)の薬なら心臓に、頻尿(ひんにょう)の薬なら膀胱(ぼうこう)に、到着した時点で効果を発揮します。

消化管内で直接的に効果を発揮する薬も一部ありますが、ほとんどの薬は、必ず血流に乗って必要な部位に届けられます。

その際、薬は、肝臓での初回通過効果を受けるので、循環血中に入るのは100%ではありません。

そして、血中に入った薬物は、体内を循環していく内に肝臓や腎臓により排泄処理を受けて、尿や糞として体外へと排出されてなくなります。

最高血中濃度と半減期と定常状態を簡単に説明すると・・・

血液内の薬の

    • 最も高い濃度を、『最高血中濃度=Cmax』
    • 濃度が最も高くなる時間を、『最高血中濃度到達時間=Tmax』
    • 最高血中濃度が半分になるまでの時間を、『半減期(T1/2)』
    • 連続的に薬を飲むことで、入ってくる薬の量と、出ていく薬の量が等しくなり、血中濃度が一定量に安定化することを、『定常状態』

と呼びます。

定常状態とは、血中濃度が上がったり下がったりと不安定でなく、安定化して薬が確実な効果を示す状態と考えて下さい。

半減期というのは、『薬の血中濃度が半分になるまでに要する時間』のことです

半減期とは、その文字の通り、『半分に減る期間』を意味します。

体内に入った薬が、半分になる時期がわかることで、、薬の効き目の長さ=薬の作用時間がわかります。

つまり、半減期が分かれば、その薬が何時間くらい効果が続くのかを、ある程度知る事ができるわけです。

全ての薬には半減期があります。

医者は、「半減期がどれくらいの薬なのか?」を、考えて処方します。

半減期の考え方

薬の半減期(はんげんき)の図解

通常、薬を内服すると、血中濃度がグンと最高濃度に上がり、それから徐々に落ちていきます。

上のグラフの薬は、

投与10時間後の血中濃度が「10」で、投与20時間後には半分の「5」に下がっています。

血中濃度が「10⇒5」と、半分になるのに要した時間は「10時間」ですから、この薬の半減期は「10時間」ということになります。

多くの薬物の半減期は、どの時点から測定してもほぼ一定となります。

つまり、血中濃度が【10⇒5】になるまでに10時間かかる薬では、【5⇒2.5】になるまでの時間も10時間なのです。

『 薬の血中濃度が5時間後に半分になるなら、10時間後にはゼロになる 』というわけではないのです。

そして、半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くくすり」と考えることが出来ます。

ただし、同じ薬を飲んでも、薬を分解する力が強い人もいれば弱い人もいるので、半減期には若干の個人差が出ます。

特に肝臓が悪いと、薬を分解する力が弱まっているため、一般的な半減期よりも、長く薬が身体に残ってしまいます。

半減期と服薬回数

薬を1日に何回飲めばよいのかを、考える時に重要なのが、「半減期」です。

半減期が短いものは1日3回、長いものは1日1回というように、薬の服薬回数は、半減期を反映している場合が多いのです。

定常状態

定常状態には血中濃度半減期の4~5倍の時間にわたって連続投与したときに達する。

血中薬物の消失にも、血中濃度半減期の4~5倍の時間を有する。

定常状態の血中濃度が、初回投与の血中濃度の何倍になるのかは、投与間隔/血中濃度半減期の比できまる。

半減期と血中濃度推移の関係を理解しておくと、薬の効果が表れるまでの期間を予想したり、効果がなくなるまでの期間を予想できることがあります。

投与間隔と半減期がほぼ同じ場合

半減期が約8時間の薬を、1日3回投与した場合を考えます。

6時と14時と22時にしてみます。

半減期での血中濃度を、「10」とします。

これを繰り返した場合、半減期4~5倍の時間で定常状態に血中濃度は少しずつ上昇していき、やがて同じ血中濃度の範囲を上下するようになります。

上の表ですと、大体『39』を超えると、濃度の違いがほとんどなくなるわけです。

この状態を定常状態といいます。

定常状態で平均血中濃度が有効域に入っていれば、医薬品は安定した効果を発揮すると期待できます。

投与を4~5回繰り返すと、ほぼ定常状態になることがわかります。

すなわち、半減期の4~5倍の時間で血中濃度は定常状態になります。

1日3回づつ服用すれば、1.5日後には安定した効果が期待できるようになるでしょう。

この考え方は半減期の長さに関係なく応用できます。

ジゴキシンの半減期は約40時間です。

ジゴキシンの血中濃度が定常状態になるまでに、半減期の4~5倍の時間がかかるとすると、約1週間程度かかることになります。

このように半減期が分かっていれば、その4~5倍を目安に、安定した効果が表れるまでの時間を推定できます。

半減期の長い医薬品を飲み始める患者さんには、安定した効果が表れるまでに時間がかかる可能性があることをお話しして、飲み始めの頃に、薬の効果が感じられないからと言ってすぐにやめてしまわないように話しておくとよいでしょう。

もう1つ、半減期が長い医薬品で注意しなければならないのは、薬の作用を中止しても、すぐには体内から医薬品がなくならないことです。

従って、半減期の長い医薬品の場合は、投与中止後も、半減期の4~5倍程度の時間を経過するまで、薬はまだ体内に残っていると考える必要があります。

半減期が長く、かつ、相互作用を起こす可能性のある医薬品には特に注意が必要です。

例えばマクロライド系抗生物質のアジスロマイシンは、半減期が長く3日間服用で1週間効果が持続する医薬品です。

アジスロマイシンは抗凝血薬のワルファリンとの相互作用が知られていますが、アジスロマイシンの服用をやめた後も、1週間程度は相互作用に注意する必要があります。

例えば、痛み止めのロキソニン。

半減期は1時間ちょっとです。

用法は1日3回ですね。

「定常状態」という概念が必要になります。

半減期の長い薬を飲むと徐々に前回分が身体に溜まっていき、最高血中濃度が上がっていきます。

簡単にすると・・・

半減期を3倍して

投与間隔を超えていれば定常あり!!

ということですね。

これに基づいて考えるとすごくシンプルです。

ロキソニンは1日3回服用なので、

投与間隔を6時間とすると

投与間隔 ÷ t1/2 ≒5となるので、定常状態には達しません。

これはつまり、

1回目の服用から最大の効果を得られるということです。

逆にいえば、繰り返しても効果が強くなることはありません。

一方、ベシケアはというと、

1日1回服用なので、投与間隔は24時間です。

投与間隔 ÷ t1/2 ≒0.6となります。

つまり、第一条件はクリアです。

いつ定常状態に達するかというと、t1/2(40時間) × 5 = 200時間 ≒8.3日

つまり本当の効果がでるま約1週間はかかるのです。

飲み始めて1週間以上経って、初めてその効果を判定すべき薬というわけです。

副作用についても定常状態に達してから確認すべきです。

こう考えるといままで何気なく言っていた「5,6時間は間隔をあけてくださいね。」

「続けて飲むようにしてくださいね。」

といった言葉の重みは、全く変わってくる気がします。