最適な睡眠薬の選び方

睡眠薬の系統・種類

現在日本の医療機関で主に用いられる睡眠薬には、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、およびメラトニン受容体作動系、オレキシン受容体阻害系の各睡眠薬と催眠・鎮静系の抗うつ薬があります。

    1. ベンゾジアゼピン系の睡眠薬
    2. 非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬
    3. メラトニン受容体作動系の睡眠薬
    4. オレキシン受容体阻害系の睡眠薬
    5. 催眠・鎮静系の抗うつ薬

睡眠薬の特徴~系統別の欠点・副作用

睡眠薬・不眠症治療薬の主流は、ハルシオン・デパス・レンドルミン・ユーロジンなどのベンゾジアゼピン(BZ)系の薬剤および、マイスリー・アモバン・ルネスタなどの非ベンゾジアゼピンの薬剤です。

しかし、BZ系、非BZ系は共に、GABA神経伝達システムに作用を及ぼし、中枢神経系への広範囲な阻害効果を持っています。

『中枢神経系への広範囲な阻害効果』とは、記憶障害(健忘)をもたらしたり、翌日に鎮静を生じさせたり、使用を中断することによって不眠症がリバウンドしたりすることです。

さらに、ベンゾジアゼピン(BZ)系も非ベンゾジアゼピン系の薬剤も、習慣性や依存性を促進する可能性があります。

そして、入眠困難および睡眠維持障害の双方の不眠症を有する患者では、BZ系や非BZ系の薬剤で治療することは困難かもしれません。

BZ系や非BZ系の睡眠剤は、本来は、断続的または短期的に使用されるべきですが、多くの医者が、副作用の問題を無視して、慢性的に処方しています。

絶対に使ってはいけない?~ベンゾジアゼピン系薬剤の欠点・デメリット・怖さ

絶対に使ってはいけない?~ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用・依存性・耐性

副作用が無く、体に優しいおススメの睡眠薬

BZ系や非BZ系の薬剤には、有害事象の症例が多く、長期間の使用は控えることが推奨されています。

推薦できるのは、メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体阻害薬です。

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睡眠薬の欠点・副作用の比較表

睡眠薬の長期服用時のリスク

睡眠薬に強さの差はあるの?~強い睡眠薬と弱い睡眠薬

日本睡眠学会のガイドラインには、「不眠症の改善効果は各薬剤間で大きな差はありません」と記載されています。

どの睡眠薬を使ったとしても、薬の強さにはほとんど違いがありません。

ピーク時の強さは同じだが、一番薬が効く時間帯に違いがあるということです。

睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン

「長時間型の方が強そうだ」と勘違いしている方がいますが、「長く効く=薬が強い」ではありません。

睡眠薬の半減期比較

不眠症のタイプによる睡眠薬の選び方

睡眠薬は、不眠症状のタイプに応じて、ふさわしい持続時間の薬剤を選択します。

不眠症を入眠困難型、睡眠維持障害型(中途覚醒、早朝覚醒)に分類した場合

    • 入眠困難型⇒『眠るまでに苦労する』=消失半減期の短い睡眠薬
    • 睡眠維持障害型⇒『途中で目が覚めてしまう』、『早く目が覚めてしまう』=消失半減期が長い睡眠薬

が推奨されています。

睡眠薬の分類・比較

睡眠薬使用時の注意点

睡眠薬は、医師の指示のもと正しい用量を守って服用すれば、安全度は高い薬剤です。

ただし、眠れないからといって指示用量を超えて追加服用したり、あるいはアルコールと一緒に服用してはいけません。

大部分の睡眠薬は、服用初期(初日~1週間以内)から、不眠症状の改善効果が実感できる速効性の薬剤ですが、1~2週間以上継続服用することで、睡眠効果は、より安定します。

また、最近登場した新しいタイプの睡眠薬であるラメルテオンの場合、服用初期から効果が無いわけではありませんが、3ヶ月程度連続して服用することで、睡眠効果が最も大きくなります。

バラ色の夢を見る睡眠薬=ロゼレム

睡眠薬の服用前はできるだけ刺激を避け、リラックスできる状況を作り、30分以内に就床するようにしましょう。

睡眠の効果が出るまでの時間は、薬剤間でそれほど大きな差はなく、ほとんどの睡眠薬は服用して10分~30分後には、眠気が生じてくるので、就床直前に服用するようにしましょう。

副作用~安全性の比較

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用としては、筋弛緩作用(ふらつく、そのため転倒してしまう)、持ち越し効果(翌朝に眠気、ふらつき、倦怠感を感じる、そのため起きられない)などがあります。

また、頻度が高いわけではありませんが、耐性(薬剤の効果が少しずつ薄れてしまうこと)、依存性(その薬がないと眠れなくなってしまう)を形成する可能性もあります。

ベンゾジアゼピンとは

ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の間で短期的効果には大きな差はありません。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比較して、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬では副作用の頻度は低いが、ふらつきにはなお留意する必要があります。

メラトニン受容体作動薬は、体内時計に密接に関与するメラトニン受容に作用することにより、睡眠ー覚醒リズムを改善するタイプで、もっとも安全性が高く、高齢者や基礎疾患がある患者など副作用・有害事象のハイリスク患者にも安心して使えます。

リズム異常を有する不眠症に対しては、メラトニン受容体作動薬が第一選択肢となります。

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複数の睡眠薬を服薬することの是非

2種類以上の睡眠薬を飲むことは、身体にとって良いのでしょうか?

少なくとも治療初期には 、可能な限り単剤(一種類の睡眠薬)の容量を調節することで対処することが望ましいとされています。

入眠困難と睡眠維持障害の両方で悩んでいる患者に対しても、異なる半減期を有する複数の睡眠薬を併用することに、科学的根拠はなく、むしろ副作用のリスクを高める可能性があります。

睡眠薬の常用と頓用

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるゾルピデムの頓用療法は、定期服用時と同等の治療効果を有し、また認容性に優れていることを示す複数のエビデンスがあり、比較的軽症で治療初期の不眠症患者に対する治療選択肢の一つとなりえる。

他の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬でも同様な効果が得られる可能性があるが、臨床試験は実施されていない。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬については休薬夜に薬物離脱性の不眠症状の悪化が見られる危険性が否定できないため、頓用は推奨されず、必要な場合には慎重に行うべきである。

睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン