セロトニントランスポーターとは

セロトニントランスポーター(Serotonin Transporter)

セロトニンは、人間の脳や身体のシステムに重要な働きを担う3大神経伝達物質のひとつです。

3大神経伝達物質とは

  • セロトニン=抑制・沈静系ホルモン:人間の精神面に大きな影響を与える
  • ノルアドレナリン=興奮系ホルモン:怒り・恐怖・不安に影響を与える
  • ドーパミン=興奮系ホルモン:快感・高揚感を増幅する

セロトニンは、ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、コントロールし、脳やカラダのバランスを正常に整える作用があります。

そして、人を安心させるような情報を、主に伝えるため、セロトニンの分泌が多い人というのは、精神が安定していると言われます。

逆に、セロトニンが不足すると不安を感じるようになったり、うつ病の症状が出たりします。

また、セロトニンが不足すると感情にブレーキがかかりにくくなって、快楽におぼれ、依存症に陥ったりもします。

セロトニントランスポーターは、セロトニンの運び手になります。

セロトニントランスポーターの役割

トランスポーター(Transporter)とは、運び手=輸送体のことを意味します。

何かを運ぶ、人・車・船・飛行機等のことです。

セロトニントランスポーターは、セロトニンの量を調節しているタンパク質ですが、

セロトニンを【 再取り込み 】する役割も担っています。

再取り込みとは

  1. セロトニンのような神経伝達物質が神経細胞から脳内に出て
  2. 別の神経細胞の表面にある受容体にくっついて情報を伝達した後に
  3. 使われないで余ったセロトニンが
  4. トランスポーターによって、また、もとの神経細胞に取り込まれていくこと

です。

セロトニンの場合は、神経細胞に戻すのは、セロトニントランスポーターです。

再取り込みが行われる理由・訳

神経伝達物質がシナプス間隙に放出されたままでいると、そこに残された神経伝達物質の量はいつまでも変わりません。

すると、いつまでも伝達が続くことになります。

セロトニン(5HT)には、セロトニン独自の、トランスポーターが存在します。

セロトニントランスポーター(5HTT)です。

5HTT(セロトニントランスポーター)は、脳内だけでなく、血小板(血中のセロトニンはここで作られます)、胎盤、肺にも存在します。

5HTTは、シナプス間隙に遊離されたセロトニンをPre側に取り込み、シナプス間隙のセロトニン量を減らし、シナプス伝達を終了させます。

しかし、

セロトニントランスポーターによって、セロトニンの再取り込みが行われすぎると、

脳内のセロトニンが不足し、欝(うつ)のような症状になることがあります。

5HTT(セロトニントランスポーター)の働きを抑制することで、うつ病の治療を行う薬のことを

SSRI=選択的セロトニン再取り込み阻害薬

と、呼びます。

SSRI:選択的セロトニン再取込阻害薬

SSRIは、

セロトニントランスポーター(5HTT)が、セロトニンを神経細胞に戻してしまうことを止めることで、脳内のセロトニンの不足を避けます。

つまり、

シナプス間隙のセロトニン量が減少するのを防いで、セロトニンの効果を高めることで、鬱症状(うつしょうじょう)を抑えるのです。

SSRI:選択的セロトニン再取込阻害薬についての詳しい解説

SSRIは、

  1. シナプス同士の間に残っているセロトニンを
  2. 神経細胞に戻そうとするセロトニントランスポーターの働きを邪魔することで
  3. セロトニンを脳内に充足させ
  4. 精神の安定を図る

という訳です。

セロトニントランスポーター遺伝子

セロトニントランスポーター遺伝子とは、セロトニンの伝達に関係している遺伝子です。

セロトニントランスポーター遺伝子は、セロトニントランスポーターの機能をコントロールします。

セロトニントランスポーター遺伝子には

  • 情報の文字数が短いS遺伝子
  • 情報の文字数が長いL遺伝子

の2種類があります。

遺伝子は、父と母から1つずつもらうので、人のセロトニントランスポーター遺伝子は

  1. SSタイプ(父=S + 母=S)
  2. SLタイプ(父=S + 母=L)
  3. LLタイプ(父=L + 母=L)

の3タイプに分類されます。

S遺伝子を持つ人は、L遺伝子を持つ人より、神経質な傾向が強いことがわかっています。

  • S遺伝子⇒ネガティブ遺伝子:不安・慎重・悲観的
  • L遺伝子⇒ポジティブ遺伝子:前向き・楽観的

つまり、

LL→SL→SSとなるにしたがって、神経質な傾向が強まるわけです。

日本人に悲観的な人が多く、アメリカ人に楽観的な人多い、と言われますが、

『セロトニントランスポーターのS遺伝子を、世界で最も所有するのは日本人』、ということが最新の研究報告で明らかにされています。

最近の研究によると、日本人とアメリカ人のセロトニントランスポーター遺伝子のタイプ別の割合は、以下の通りです。

セロトニントランスポーター遺伝子の比較

日本人

SSタイプ・・・68.2%

SLタイプ・・・30.1%

LLタイプ・・・1.7%

アメリカ人

SSタイプ・・・18.8%

SLタイプ・・・48.9%

LLタイプ・・・32.3%

日本人にはSSタイプとSLタイプが多く、アメリカ人にはSLタイプとLLタイプが多いことが判ります。