最適な抗うつ薬の選び方
抗うつ薬の選択基準
抗うつ薬を使うのが初めてなら、
エスシタロプラム(レクサプロ)か
セルトラリン(ジェイゾロフト:ゾロフト)を試すのが
最良の選択ですよ!
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うつ病の治療において、抗うつ薬を使う場合は、新規抗うつ薬から始めるのが、現在の原則になっています。
新規抗うつ薬とは、SSRI、SNRI、NaSSAの三種類です。
既存の抗うつ薬⇒三環系・四環系
新規の抗うつ薬⇒SSRI・SNRI・NaSSA
どうして新規抗うつ薬から始めるのが良いのか?
それはもちろん、副作用が少ないからです。
薬剤は安全性が高いものから使うのが鉄則です。
特に、うつ病の治療では、抗うつ薬の副作用は大きな問題です。
三環系抗うつ薬
四環系抗うつ薬
SSRI:選択的セロトニン再取込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor)
SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(serotonin noradrenaline reuptake inhibitor)
NaSSA:ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant)
うつ病かどうかの判断基準 & 抗うつ薬の種類と特徴 & 薬価で見る抗うつ薬の比較
新規抗うつ薬の選び方~最適な抗うつ薬は?
SSRI、SNRI、NaSSAの三種類のそれぞれに、長所と短所がありますが、
総合的に見ると、どれも同じくらいの効果・副作用だと考えられていました。
治すことだけを考えれば、どの抗うつ薬もそれなりの効果があり、どれを使っても間違いではないのかもしれません。
しかし、副作用は人それぞれに違ってきます。
効果と副作用の両方を考慮しながら、自分にふさわしい抗うつ薬を検討することが必要になります。
なので、”最も高い有効性”と”最も低い副作用”を合わせ持つ『抗うつ薬』があれば、
あなたにとって一番良いわけです。
それでは、効き目があって、副作用の少ない、抗うつ薬を探していきましょう。
新規抗うつ薬の強さと副作用のランキング~MANGA Study報告
新規抗うつ剤の強さ(効き目)と副作用をランキングした
マンガスタディ=MANGA studyという報告があります。
MANGA Studyは、イタリアのCipriani AとBarbui C、日本からは名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野の古川壽亮教授、渡辺範雄先生、大森一郎先生、慶應義塾大学病院精神科の中川 敦夫先生、英国からはGeddes JR、Hinggins JP、Churchill Rら、そしてギリシャからはSalanti Gと、4ヶ国の研究グループが行った共同研究です。
MANGA ⇒ Meta Analyses of New Generation Antidepressants
Meta-Analyses=メタ解析
New Generation=新世代
Antidepressants=抗うつ薬
メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことです。
12種の新規抗うつ薬の有効性と許容性の比較:multiple-treatmentsメタ解析(MANGA Study)
multiple-treatments=複数の治療
新規抗うつ薬の有効性に関して、従来型メタ解析では一致した結果が得られていませんでした。
そのため、新規抗うつ薬間で比較した臨床試験の内、論文化されたものや製薬会社のホームページなどで公表されているものをまとめて、直接ならびに間接比較を交えたメタ解析行ったものが、『MANGA Study』です。
MANGA studyの解析の画期的なところは、従前の”効果=有効性”における強弱のみならず、副作用や効果不十分など種々の要因による中断ケースをみた”許容性=副作用”の面でも比較しているところです。
日本では未発売のフルオキセチンを1とした時、他の抗うつ剤はどのくらいかというものを評価しています。
有効性・忍容性ともに数値が高い方が「良い」ということを表しています。
有効性⇒治療の効果(薬の効き目)
受容性⇒止めずに続けられたか(副作用の少なさ)
MANGA Study報告では、成人の単極性大うつ病の急性期治療(発症から8週間)の結果を、117の無作為化対照試験(n=25,928、1991~2007年11月30日)から比較し、系統的にレビューしています。
MANGA Study:解析の結果
成人の単極性大うつ病に対して治療用量範囲内で使用した12種の新規抗うつ薬を、割り付け治療に対する治療反応率と脱落率で比較しています。
治療反応率⇒治療の効果があった(有効性)
脱落率⇒副作用のために途中で服薬を止めてしまった(許容性)
解析はintention-to-treat集団で行いました。
抗うつ薬を使うのが初めてなら、
エスシタロプラム(レクサプロ)か
セルトラリン(ジェイゾロフト:ゾロフト)を試すのが最良の選択です。
受容性で見る抗うつ薬のランキング
ブプロピオン(日本未承認)
シタロプラム(日本未承認)
フルオキセチン(日本未承認)
ミルナシプラン(トレドミン)
ベンラファキシン(日本未承認)
デュロキセチン(サインバルタ)
レボキセチン(日本未承認)
有効性(治療反応率)でみる結果ランキング
ミルタザピン、エスシタロプラム 、ベンラファキシン、セルトラリンの治療反応率は、
デュロキセチン (オッズ比:1.39、1.33、1.30、1.27)、フルオキセチン(同OR:1.37、1.32、1.28、1.25)、フルボキサミン(同OR:1.41, 1.35,1.30, 1.27)、パロキセチン(同OR:1.35、1.30、1.27、1.22)、ルボキセチン(同OR:2.03、1.95、1.89、1.85)と比較して有意に高かった。
ベンラファキシン(日本未承認)
シタロプラム(日本未承認)
ブプロピオン(日本未承認)
ミルナシプラン(トレドミン)
フルオキセチン(日本未承認)
デュロキセチン(サインバルタ)
レボキセチン(日本未承認)
レボキセチンの治療反応率は、他のいずれの抗うつ薬よりも有意に劣った。
有効性のオッズ比
エスシタロプラムとセルトラリンは許容性に関して最も良好な結果を示し、
デュロキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、ルボキセチン、ベンラファキシンに比して有意に脱落率が低かった。
MANGA study:中川敦夫先生による考察
有効性と許容性に関して、日常診療で使用されている新規抗うつ薬の間には臨床的に重要な違いが認められ、
とりわけ
エスシタロプラム(レクサプロ) とセルトラリン(ジェイゾロフト:ゾロフト)が優れていました。
成人の中等度~重症の大うつ病の治療開始の際には、有効性、許容性、コストのバランスを考慮するとセルトラリンから開始するのが最も望ましいことが示唆されました。
この結果を見ると効果は
ミルタザピン(リフレックス・レメロン=NaSSA)が最強となっています。
その代わり副作用も多めという結果ですね。
NaSSAは効果は良いんだけど眠気や体重増加の副作用で使用を断念することもあります。
レクサプロ(SSRI)やジェイゾロフト(SSRI)は、
効果も良くて副作用も少ないという理想的な位置づけになっていますね。
個人的にはサインバルタ(SNRI)の評価がちょっと悪すぎる気がします。
臨床的な印象としてはサインバルタは、効果は強めで副作用もそこまで多くはありません。
三環系&四環系を使う場合
三環系や四環系の抗うつ剤が使われるのは、
新規抗うつ剤だけでは十分な改善が得られなかった
新規抗うつ剤が何らかの理由で使えない
特に、三環系の場合、強い副作用があるため、服用には充分な注意が必要ですが、やはり三環系の抗うつ効果は強力です。
新規抗うつ剤をいくら使っても治らなかった症状が、三環系に変えることで改善することは、少なくありません。
三環系は、難治性・重症のうつ病の方にとっては、最後の切り札と言える強力な抗うつ剤です。
三環系抗うつ剤の使い分け
理論上は、セロトニンが落ち込みや不安を改善させ、ノルアドレナリンが意欲を改善させると考えられています。
トリプタノール⇒セロトニンとノルアドレナリン両方を増やす
トフラニール⇒ノリトレンはノルアドレナリンを優位に増やす
アナフラニール⇒セロトニンを優位に増やす
ため、症状に応じてこれらを使い分けます。