ベンゾジアゼピン系薬剤の比較表

ベンゾジアゼピン系薬物の分類・仕分けの目安

ベンゾジアゼピンは、抑制性神経伝達物質のγアミノ酪酸(GABA:ギャバ)の作用を増強する薬物です。

GABA受容体には、5つのタイプがあり、それぞれ違う働きを行っていますが、どのギャバ受容体に作用するかで、それぞれのベンゾジアゼピン系の薬剤がどのように作用するかも、決まってきます。

ベンゾジアゼピン系の薬剤~5つの作用

ベンゾジアゼピン系の薬剤には、

    1. 不安や緊張の緩和作用
    2. 催眠や鎮静作用
    3. 自律神経安定化作用
    4. 筋弛緩作用
    5. 抗痙攣作用

があります。

販売用途による分類

催眠、鎮静作用が強い薬剤は睡眠薬として使用されます。

不安や緊張緩和作用が強い薬剤が抗不安薬として使用されます。

    • 抗不安薬としては(a)
    • 睡眠薬としては(h)
    • 抗痙攣薬としては(e)

◎抗不安薬

抗不安薬は、病的な不安や緊張を軽減させる薬物で、精神疾患としての不安障害だけでなく軽い不安感やイラ

イラ感、肩こりや頭痛などの筋緊張等に対してもよく用いられている。抗不安薬は作用機序により、ベンゾジア

ゼピン系薬物とセロトニン1A受容体に作用する薬物に分類される。

・ クロルジアゼポキシド(コントール、バランス):ジアゼパムと同様古典的な薬剤で、最高血中濃度到達時間は1~3時間、半減期 24 時間です。

世界で初めて作られたベンゾジアゼピン系化合物です。効果が出るまでの時間が長く、また持続する抗不安薬です。作用は緩和で神経症や心身症、鬱病に伴う不安・緊張などに使われます。また、アルコール依存症の離脱期における不安・緊張に対しても使われます。鎮静・催眠作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用は弱いと言われている薬です。

・ ジアゼパム(セルシン、ホリゾン、ソナコン):筋弛緩作用、抗けいれん作用が強い。注射製剤は、てんかん発作やパニック発作に使用されています。

ベンゾジアゼピン系の代表的な抗不安薬で、効果が出るまでの時間が早い薬です。また持続時間の長い薬です。不安な気分を和らげる効果の他、鎮静・催眠作用・筋弛緩作用、抗けいれん作用を持っていますので、多くの症状に使用できます。注射薬は急性の不安発作の他、てんかん重責状態やアルコール離脱時の振戦せん妄などにも用いられます。小児用の坐薬もあります。

・クロキサゾラム(セパゾン):抗不安作用、筋弛緩作用も中程度、作用時間は中程度からやや長い。

効果が出るまでの時間が長い薬です。抑うつ神経症、強迫神経症に対しても効果がみられます。治療効果は、投与開始後の1~2週間で認められます。

・ オキサゾラム(セレナール):最高血中濃度到達時間は 8.2 時間、半減期約 55 時間、約 80%が尿中排泄される。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬で効果が出るまでの時間が長い薬です。効果が大体半分になるまでの時間は56時間もあります。不安な気分を和らげる作用は緩和で、眠気や筋弛緩などの副作用は少ない薬です。比較的安全で使いやすい薬なので、精神科以外でも良く使われます。

トフィソパム 商品名:グランダキシン

ベンゾジアゼピン系の薬と同じ効果がある抗不安薬で、効いている時間の短い薬です。

他の抗不安薬が大脳辺緑系を中心に作用するのに対して、視床下部に強く作用します。このことにより自律神経系の緊張やバランスの悪い状態を改善します。

抗不安作用に比べて、鎮静・催眠作用、筋弛緩作用は弱く、副作用も少ない薬です。

自律神経失調症、更年期障害などに見られる頭痛・頭重、倦怠感、心悸亢進、発汗などの身体症状に効果があります。効果が出てくるまでの時間は中程度で、薬を飲んでから大体1時間で効き目が最大になり、12時間後には効果がなくなります。

・ メダゼパム(レスミット):最高血中濃度到達時間は0.5~1.5 時間、半減期0.5~1.5 時間、尿中排泄 55~63%、 糞中排泄8~22%です。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。効果が出るまでの時間が長い薬です。鎮静作用、睡眠作用、筋弛緩作用が弱いので、日中の活動時に用いるのに適した抗不安薬として「日中に使う抗不安薬」とも呼ばれています。適応症も広く、効果が一定になるのが遅いので夜間に服用すると催眠効果を発揮して、翌日には抗不安薬として作用します。

・ プラゼパム(セダプラン):最高血中濃度到達時間 1.3 時間、半減期 94 時間で、22~32%が尿中に排泄される。

・ フルジアゼパム(エリスパン):最高血中濃度到達時間は1時間、半減期約 23 時間、尿中排泄13.9%、糞中排泄 69.4%である。

・ クロラゼプ酸二カリウム(メンドン):最高血中濃度到達時間は 0.5~1時間、半減期 24 時間以上、尿中排泄 62~67%、糞中排泄 15~19%である。19)

・ メキサゾラム(メレックス):最高血中濃度到達1~2時間、半減期 60~150 時間、代謝酵素はCYP3A4 である。

・ フルトプラゼパム(レスタス):最高血中濃度到達4~8時間、半減期 190 時間、4~9%が尿中に排泄されます。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。効果が出るまでの時間が長い薬です。筋弛緩作用は強いが、運動失調は起こりにくいといわれています。不安な気分を和らげる効果が強く、作用時間は長い薬です。1日1回の服用で充分な効果があります。神経症、心身症に見られる不安、緊張、抑うつ、睡眠障害に適応があります

・ロフラゼプ酸エチル(メイラックス):血中半減期が長く、作用時間が長い為 1 日 1 回~2 回の投与に適しています。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。効果が出るまでの時間が長い薬です。1日1回の投与で充分効果があります。薬の効果になれてしまう事が余り無い薬ですので、不安障害の維持療法等に適しています。不安な気分を和らげる効果は強く、鎮静・催眠作用も強いが、筋弛緩作用は弱いので高齢者へも比較的安全に投与できます。抗癲癇作用も強く、小児に対して特に有用性が認められています。

・ブロマゼパム(レキソタン、セニラン):抗不安薬の中では、強迫性障害症状にもある程度の効果が得られます。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。効果が出るまでの時間は短時間の薬と長時間の薬の間にあります。強い抗不安作用、緊張作用を持っており、脅迫・恐怖症にも使われます。病気になってからの期間の長い慢性例の神経症や心身症にも使用されます。副作用としては、筋弛緩作用が比較的強いので、高齢者では転倒、骨折といった事故につながる事もありますので充分注意が必要です。大量に長く使うと薬物依存、統合失調症の患者に使うと刺激興奮、錯乱が出る事があります。

・ ロラゼパム(ワイパックス):最高血中濃度到達2時間、半減期約 12 時間、大部分が尿中に排泄されます。

効果が出るまでの時間は短時間の薬と長時間の薬の間にあります。抗不安作用、鎮静作用、睡眠作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用を示します。特に不安を和らげる効果は強いとされています。

不安神経症、強迫神経症などに有効です。効果の持続時間が短く、速やかに尿中に排泄されるので作用が強い割には安全性が高い薬物です。また、肝臓の機能が低下している場合にも使いやすい薬です。高齢者では副作用の出現頻度・程度とともに高まる傾向にあるので注意が必要です。

・アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス):強い抗不安作用を持ちパニック発作に著効する。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬で、効果が出るまでの時間は短時間の薬と長時間の薬の間にあります。しかし、効果の発現は速やかで、心身症や自律神経失調症に用いられます。

催眠作用はかなり強く、パニック障害や鬱病にも効果があるといわれています。しかし、依存や眠気・ふらつき等の副作用に注意が必要です。特に高齢者では転倒、骨折といった事故につながる事もあるので充分注意が必要です。血液の中の濃さが半分になるまでの時間が比較的短いので離脱症状を起こしやすく、高用量の使用は避けた方が良いといわれています。

・フルタゾラム(コレミナール):最高血中濃度到達1時間、半減期 3.5 時間、20~37%が尿中に排泄されます。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬で、効果が出るまでの時間が早い薬です。不安な気分を和らげる作用は強くありませんが、体内に蓄積しにくく、筋弛緩作用は弱く、消化管機能を安定化する作用に優れた効果をもっています。

消化器系心身症における精神症状及び身体症候の改善効果が高く、依存性の少ない比較的安全な薬です。

・クロチアゼパム(リーゼ):鎮静作用、筋弛緩作用ともに穏やかで作用時間も比較的短い。

国産のベンゾジアゼピン系抗不安薬です。効果が出るまでの時間は短く、不安な気分をやわらげる効果は強い薬です。催眠作用、筋弛緩作用は弱いので眠気やふらつきなどの副作用は少なく、消化器系心身症や循環器系心身症に効果があるといわれています。症状が軽い場合や高齢者には比較的安全に使う事が出来ます。

メキサゾラム 商品名:メレックス

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。効果が出るまでの時間が長い薬です。抗精神病薬として規制されていない薬剤のひとつです。

不安な気分を和らげる効果はやや弱く、筋弛緩作用、鎮静作用は弱い薬です。不安障害に伴う抑うつ気分に効果はありますが、気分障害の鬱状態に効果は期待できません。

脅迫症状への効果は認められており、緊張状態や恐怖症への効果も認められています。また心臓神経症へも効果を示します。高齢者へ適した薬とされています。

・ エチゾラム(デパス):抗不安作用が強く、就寝前に投与すると熟睡する。軽度の抗うつ作用も有し、わが国で最も繁用されている抗不安薬です。

国産のベンゾジアゼピン系抗不安薬です。向精神薬として規制されていない薬剤の一つです。効果が出るまでの時間が早い薬です。効果は約6時間持続するとされています。鎮静・催眠作用、筋弛緩作用が強く、抗鬱効果や不安な気分を和らげる効果もある為、鬱病・神経症・心身症などの睡眠障害に効果があるといわれています。筋弛緩作用を併せ持つため、高齢者に使う場合は転倒、骨折と言った事故につながる事もあるので充分注意が必要です。

○セロトニン1A受容体作用薬

・ タンドスピロン(セディール):セロトニン受容体には数多くのサブタイプがあり、そのひとつのセロトニン1A受容体はセロトニンの放出に抑制的に作用する。タンドスピロンはこの受容体に作用する抗不安薬である。

ベンゾジアゼピンと異なり筋弛緩作用、抗けいれん作用、鎮静作用も ほとんどなく、高齢者にも使いやすいが効果発現に2~3週間程度かかる。わが国でタ ンドスピロンのみが発売されている。

現在国内で使用できる薬剤はタンドスピロンのみですが、心身症の身体症候及び精神症状に改善効果があるとされています。ベンゾジアゼピン系薬に比べ効果の発現が遅く、1~2週間を要します抗けいれん作用、筋弛緩作用はほとんどなく、依存性、アルコールとの相互作用も見られません。また、ベンゾジアゼピン受容体には作用しないため、ベンゾジアゼピンの離脱症状の予防には効果がありません。精神症状よりも身体症状を比較的容易に寛解させるという臨床上の特徴が見られ、眠気、ふらつき、倦怠感、口渇、便秘等の副作用が少ない薬です。

非ベンゾジアゼピン系薬一覧

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の力価と半減期の比較表

ベンゾジアゼピン等価換算表

成分名 mg (薬剤名)

アルプラゾラム 0.8(ソラナックス、コンスタン)

オキサゾラム 10(セレナ-ル)

エチゾラム 1.5(デパス)

クアゼパム 15(ドラール)

クロルジアゼポキシド 10(コントロール、バランス)

クロナゼパム 0.25(リボトリール、ランドセン)

クロチアゼパム 10(リーゼ)

クロキサゾラム 1.75(セパゾン)

ジアゼパム 5(セルシン、ホリゾン)

ゾルピデム 10(マイスリー)

タンドスピロン 25(セディール)

トフィゾパム 100(グランダキシン)

トリアゾラム 0.25(ハルシオン)

二トラゼパム 5(ネルボン、ベンザリン)

フェノバルビタール 15(フェノバール)

ブロマゼパム 3.25(レキソタン)

フルニトラゼパム 1(ロヒプノール、サイレース)

ロラゼパム 1(ワイパックス)

ロフラセプ酸エチル 1.67(メイラックス)

睡眠薬の半減期と力価等価換算の比較表