アゴニストとアンタゴニストとパーシャルアゴニスト
アゴニストとアンタゴニストの比較
アゴニスト(Agonist)の機能・特徴
アゴニストとは、生体内の受容体分子に働いて、神経伝達物質やホルモンなどと同様の機能を示す薬のことで
『作動薬』と呼びます。
アゴニストは、たとえば、生理活性物質の一種である【ホルモン】の受容体(レセプター)に結合すれば、【ホルモン】が持つ作用と同じ、または類似の作用を発現します。
つまり、アゴニストが生体に入ると、そのホルモン量が増えたのと同様の効果をあらわすことになります。
ただし、【ホルモン】そのものの作用と、まったく同じわけではありません。
それなら、【ホルモン】そのものを使えば良い訳ですし・・・
【ホルモン】のように、実際に生体内で働いている物質は、『アゴニスト』とは呼ばず、『リガンド』と呼ばれます。
アンタゴニスト(Antagonist)の機能・特徴
アンタゴニストとは、生体内の受容体分子に働いて、神経伝達物質やホルモンなどの機能を抑制する薬のことで
『拮抗薬』と呼びます。
アゴニストの、反対の作用をするものが、アンタゴニストではありません。
アゴニストの機能を、抑えるものが、アゴニストです。
アゴニスト(作動薬)は、生体の働き・作用を強め、活性化させる物質の総称です。
その受容体の、『機能発現の引き金になる物質』です。
アゴニストは受容体を活性化し、期待する反応を生じさせます。
アンタゴニスト(拮抗薬)は、生体の働き・作用を弱め、不活性化させる物質の総称です。
その受容体の、『機能発現を妨げ、拮抗する物質』です。
アンタゴニストは受容体の活性化を抑制します。
アゴニスト(Agonist)の使い方
良いものの力を伸ばす為に使います。
例:
がん細胞の増加を抑制する物質の作用を、『アゴニスト』で、高める。
アンタゴニスト(Antagonist)の使い方
悪いものの力を抑える為に使います。
例:
がん細胞の増加を増やす物質の作用を、『アンタゴニスト』で、抑える。
アゴニストとアンタゴニストとの関係
例えば、100という活性のときに、アゴニストを加えて150まで上がり、アンタゴニストの追加で120まで落ちたとします。
では、アゴニストを入れない状態でアンタゴニストだけをを入れれば、70まで落ちるか?
答えは⇒⇒⇒落ちません。
あくまでも、アゴニストの機能を落とすだけなので、アゴニストのない状態で、アンタゴニストだけを使っても、効果はありません。
アゴニストの具体例
アゴニストとされる物質は、あくまで代替物質で、実際の生体物質とは少し違った性質を持っています。
多くの場合、それは分子間選択性であったり、標的分子への結合力であったりします。
たとえば、中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質としてグルタミン酸がありますが、その受容体は4種類存在します。
NMDAと言う物質はその4種のグルタミン酸受容体のうち、NMDA型グルタミン酸受容体と呼ばれる受容体だけに作用し、残りの3種には作用しません。
このような場合、NMDAをNMDA型グルタミン酸受容体に対する選択的アゴニストと呼びます。
環境ホルモンでは、合成ホルモン剤であるジエチルスチルベストロール(DES)やp-オキシPCB(PCB代謝物)は女性ホルモンのアゴニストとして作用することが知られていますが、その作用の強さは、実際の女性ホルモンに比べかなり弱くなります。
パーシャルアゴニスト(部分作動薬)とは
多くの薬は、基本的に「100%活性化させる」または「完全に阻害する」のどちらかの作用となります。
スイッチを切り替えるように、オンかオフの作用のみになります。
これによって強力な作用を得ることができ、医薬品として病気を治療できるようになります。
たとえば、D2受容体であれば、
- 刺激薬として「受容体を100%活性化させてドパミンは放出させる」
- または阻害薬として「受容体を完全に阻害してドパミンの作用をブロックする」
のどちらかになります。
そこで、薬によって受容体を100%活性化したり完全に阻害したりするのではなく、「適度にほどよく受容体を活性化させる薬は作れないものか?」と考えられました。
例えば、
どれだけ薬の投与量を多くしたとしても、受容体が30%程度だけ活性化している状態で留まるような薬があれば、統合失調症の陽性症状のようにドパミン量が多くなっていて、100%活性化の状態いある場合、その薬を投与することで受容体の活性化を30%にまで引き下げることができるわけです。
また、ドパミンの放出が少なくなっていて、0%活性化の状態では、その薬を投与することで30%の状態にまで受容体を活性化させることができます。
そして、パーキンソン症候群の危険性を軽減できるのです。
こうした、
受容体をほど良い状態にまで活性化させる薬を、パーシャルアゴニスト(部分作動薬)と呼びます。