ゾロフトってどんな薬?~欠点・副作用他:徹底解説
ゾロフトとSSRI
- ゾロフト(ジェイゾロフト)は、『SSRI』と呼ばれるタイプの抗鬱(こううつ)剤です。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害剤⇒⇒SSRI=Selective Serotonin Reuptake Inhibitorです。
- SSRIは、脳内のセロトニンの濃度を上げることで、抗うつ効果を発揮します。
- SSRIは、従来の三環系抗うつ薬と異なり、抗コリン作用(口渇、便秘、排尿障害、視調節障害)や、心血管系の副作用が非常に弱く、安全性の高い抗うつ薬です。
ゾロフトの副作用の概略
ゾロフトの副作用は、同じ『SSRI』のパキシル・レクサプロ・ルボックス等に比べると、軽くなります
パキシルとは比較されることが多く、「強さならパキシル」「副作用の少なさならジェイゾロフト」と比較されます。
効果も強い代わりに副作用も強めのパキシルと比べ、ゾロフトは、穏やかに効き、副作用も軽い抗うつ剤です。
作用発現までに2~6週間かかる遅効性です
半減期約24時間と長い為、1日1回の服用が可能で、忍容性も優れており、抗不安薬としても使用される頻度が増えていますが、薬の効果が現れるまでに、最低でも2週間ほどかかります。
服薬初期の副作用が特徴です
ゾロフトは、薬剤の投与初期に、不安・焦燥や悪心・嘔吐、性機能障害などの副作用が発現するという欠点があります。
また、多くはありませんが、人によってはかえって神経過敏になり、不安感を生じたりイライラ・そわそわ落ち着かない気分になることがあります。
さらに、自殺等の衝動的な行動につながるおそれもあるようです。
こうした、精神的変調等、ほとんどの副作用は、通常は2週間位で落ち着き、治まります。
そのため、よほどひどい状態でなければ、様子をみるのが基本的なゾロフトの飲み方になっています。
離脱症状(退薬症状・禁断症状)
BDZ系(ベンゾジアゼピン系)薬に比べれば軽度であるが、服薬中断後の離脱症状も報告されています。
一般的にはSSRIの中でパキシルよりは離脱症状が出にくいと言われています。
これは(ジェイ)ゾロフトの半減期が約22~24時間と長いことが原因であると、考えられています。
しかし、個人差があるので、通常の減量で離脱症状がでる方は、ごく少量ずつの減量が必要になる場合があります。
離脱症状は薬を変更する際にも出るので、例えば(ジェイ)ゾロフトからパキシルに変更する場合は
(ジェイ)ゾロフトを徐々に減量し、反対にパキシルは徐々に増量していく方法がとられます。
主な副作用・上位ランキング
- 悪心(おしん)=(18.9%)
- 悪心(おしん)
- ~嘔吐(おうと:吐くこと)の前に起こる、気持ち悪さのこと・吐き気
- 傾眠(けいみん)=(15.2%)
- 口内乾燥=(9.3%)
- 頭痛=(7.8%)
- 下痢=(6.4%)
- 浮動性めまい=(5.0%)
SSRIによる悪心・嘔気発生の仕組み・メカニズム
ジェイゾロフトなどのSSRIの服用初期に現れやすい副作用である悪心嘔気は、
セロトニンの再取り込みを阻害して消化管粘膜細胞近傍のセロトニン濃度を増大させることにより、
5-HT3受容体を介して嘔吐中枢が刺激され発現すると考えられています。
吐気は特に服用初期に起こる可能性が高く、副作用を防止する為に、プリンペラン等の吐き気止めと一緒に処方されることが良くあります。
その他として
- 便秘
- 口渇
- 尿閉
- ふらつき
- 不眠
- 性機能障害
その他の副作用について
セロトニン症候群
重い副作用は頻度的にほとんどありませんが、この系統(SSRI)の特異な副作用として「セロトニン症候群」があります。
本当に稀ですが、念のため頭に入れておいたほうがよいでしょう。
「セロトニン症候群」では、混乱状態、発汗、体のぴくつき、ふるえ、けいれん、発熱といった症状があらわれます。
なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、すぐに医師に相談してください。
抗コリン作用による副作用
- 便秘
- 口渇
- 尿閉
これらは抗うつ剤が持つ、抗コリン作用という働きで生じる副作用です。
抗コリン作用が一番強い抗うつ剤は、三環系(トフラニール、アナフラニール、トリプタノール等)です。
ゾロフトをはじめとしたSSRIは、三環系と比べると抗コリン作用はかなり軽減しています。
更にSSRIの中でも、ジェイゾロフトは抗コリン作用が少なく、
パキシルやルボックスは抗コリン作用が比較的多いと言われています。
他に抗コリン作用が弱い抗うつ剤としては、
Nassa(リフレックス/レメロン)やドグマチールなどがありますので
抗コリン作用がつらい場合は、これらの薬に変更するのも一つの方法になります。
抗コリン作用は便秘を生じさせますが、一方でジェイゾロフトは下痢になる可能性もあります。
これは本当に人それぞれで、 便秘になる人もいるし下痢が出る人もいるし、
両方がちょうど釣り合って便通に問題が出ない方もいます。
α1受容体遮断作用による副作用
ふらつきやめまいは、抗うつ剤がα(アドレナリン)1受容体という部位を遮断し、血圧を下げてしまうために起こる副作用です。
これも三環系、そして四環系(ルジオミール、テトラミドなど)で多く、SSRIでは大分軽減されています。
SSRIの中ではジェイゾロフトのα1受容体遮断作用はやや少なく、これもやはりパキシルで比較的多く見られます。
Nassaの場合は、α受容体遮断作用は弱いのですが、抗ヒスタミン作用というものがあり、
これが眠気を引き起こすため、ふらつきめまいが生じます。
また、デジレルは5HT(セロトニン)2A受容体という、神経を興奮させる受容体を遮断するため、鎮静による、ふらつきやめまいが生じます。
一方SNRI(サインバルタ、トレドミン)は、血圧を上げる働きがあるため、めまいやふらつきが起こる頻度は少ない印象があります。
抗ヒスタミン作用による副作用
- 眠気
- 体重増加
眠気
眠気は抗うつ剤ほぼ全てに起こりうる副作用です。
抗うつ剤は身体をリラックスさせるので、当然と言えば当然です。
坑うつ剤の中でも、鎮静系抗うつ剤と呼ばれるものは眠気の程度も強めです。
(だからこそ、鎮静系と呼ばれている訳です)
Nassaや四環系、デジレルなどですね。
これらの薬は眠気が生じて困ることもあるのですが、一方で不眠の改善にもなりえるため
不眠が強いうつ病の方には、あえて眠気が出ることを狙って鎮静系抗うつ剤を処方することもあります。
ジェイゾロフトの眠気は比較的弱いと言えますが、それでも出る人には出ます。
体重増加
服用によって太るなどと言われている事がありますがこれは体調がよくなり元気になる事による食欲増進によるものや
受容体遮断作用など様々な要因が原因となっています。
体重増加は眠気と同じく、主に抗ヒスタミン作用で生じるため、眠気の多いお薬は体重も増えやすいと言えます。
Nassaに多く、三環系やパキシルもそれに続きます。
ゾロフトは体重増加の副作用はあまり強くはありません。
むしろ初期には下痢などの副作用も重なり体重が少し減ることもあります。
しかし、長期間内服を続けると、ジェイゾロフトでも太ってしまうことは少なくありません。
抗うつ剤は長期間飲むことが多いお薬ですので、そう考えると出現する頻度は決して少なくないと言えます。
(それでも他の抗うつ剤よりは少ないですが)
5HT2刺激作用による副作用
- 不眠
- 性機能障害
不眠
SSRIやSNRIは深部睡眠(深い眠り)を障害するため、不眠を起こす事があります。
ジェイゾロフトも例外ではなく、深部睡眠が障害される可能性があります。
「眠気」と「不眠」両方の副作用があるので、不思議に思うかもしれません。
これは、「眠くなるけど、眠ると浅い眠りになってしまう」ということです。
この副作用はセロトニンに選択的に作用するSSRI、SNRIでより多く認められ、次いで三環系に認められます。
反対に、四環系やデジレル、Nassaなどの鎮静系坑うつ剤は、深部睡眠を促進することが分かっています。
眠くはなるけど、深い眠りを導いてくれますので、不眠の副作用はほぼ認めません。
性機能障害
SSRIの中でも、ジェイゾロフトの性機能障害は頻度が多いとする報告もあります。
勃起障害や射精障害と言った性機能障害もSSRI、SNRIに多い副作用です。
この原因は詳しくは分かっていませんが、セロトニンが関与していると言われています。
デジレルでも多く認められます。
三環系でも性機能障害は起こしますが、SSRI、SNRIよりは少ないです。
反対に、四環系やNassaは、性機能障害をほとんど起こしません。