絶対に使ってはいけない?~ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用・依存性・耐性

ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用・依存性・耐性

ベンゾジアゼピン(BZ)系薬は、睡眠薬や抗不安薬として幅広い診療科で使用されている薬剤です。

以前は、高い有効性と安全性を有していると言われていましたが、過鎮静やふらつき、長期使用での依存性・耐性などの副作用が大きな問題となり、あの有名な”デパス”も、ついに『向精神薬』に指定されました。

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ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用

    • 持ち越し効果(翌日の眠気、集中困難)
    • 記憶障害(健忘)
    • 筋弛緩作用や反射抑制
    • 依存性
    • 耐性
    • リバウンド(反跳性不眠)

BZ系薬薬剤の副作用は、低用量で短期間の使用であれば目立ちません。

しかし、多剤併用や高用量使用、長期使用になると問題が顕在化することがあります。

BZ系薬の効果は、GABA神経系を直接変化させるものではなく、一定用量で作用は頭打ちとなります。

一定量以上では効果は得られないにもかかわらず、副作用のリスクだけが高くなるということに注意すべきです。

服薬によって、効果が安定しているように見えても、副作用が生じている可能性には注意を払うべきであり、必要がなくなれば中止すべきです。

依存性や耐性等、ベンゾジアゼピン系の薬剤の問題を防止するためには、なるべく短期間の服用が望ましいのです。

BZ系薬の副作用とリスク因子

持ち越し効果

薬物の効果が次の日の朝まで続いてしまい、眠薬の効果が翌日まで持続してしまうことです。

眠気やふらつきなどの症状で、集中することが出来なくなります。

薬物代謝能力は、加齢や体調、併用薬剤の使用状況などによって変化しますが、加齢によって代謝能が低下したところに、代謝を阻害する薬剤を併用するようになると、身体的疲弊状態にあった場合、持ち越し効果が強く生じることがあります。

結果として日中の眠気や集中力の低下を生じ、交通事故の要因となったりします。

依存性

薬の種類、用量、期間などによりますが、数週間以上、毎日常用していると、薬に対する身体依存が形成されてしまいます。

一旦、ベンゾジアゼピン系薬に対する依存性が出来てしまうと、急に服薬を中止することで退薬症状(離脱症状)、つまり、【禁断症状】が出現します。

物事を考えられなくなってしまうほどイライラが強まってしまったり、場合によっては、てんかん発作などの深刻な症状が出現することもあります。

耐性

耐性ができると、最初は効き目のあった、使用量では効かなくなり、だんだんと、服薬量が増えていきます。

記憶障害(健忘)

薬物服用後、「眠るまでの出来事」や「朝起きた時の出来事」の記憶がない症状が起きます。

リバウンド(反跳性不眠)

ベンゾジアゼピン系薬を長い間使用している段階で、急に服用を止めてしまうことで不眠・恐怖・ふるえなどの離脱症状が起こります。

ベンゾジアゼピン系薬の依存性

依存とは、

    • 『体に悪いとわかっていても止められない』
    • 『やめるとかえって病状が悪化する』

という状態です。

BZ系薬の副作用である依存性には、どんな特徴があるのでしょうか。

依存を回避するには、どのような使い方をすればよいでしょうか。

依存は身体的依存と精神的依存からなります。

    • 身体的依存⇒身体的依存は中止時の離脱症状と耐性形成
    • 精神的依存⇒精神的依存は渇望感により物質使用の制限ができなくなる認知・感情・行動に及ぶ症候

BZ系薬の依存においては、身体依存と精神依存の両方を伴って問題が事例化しやすい依存症例と、身体依存のうちの離脱症状のみが問題となる症例があります。

身体依存のうちの離脱症状のみが問題となる症例、つまり、BZ系薬を臨床用量で使用しているので、通常では問題を生じないのだが、退薬症候を生じるため服用を続けている状態は「臨床用量依存」と呼ばれることもあります。

「臨床用量依存」は、服用量が増量することはないものの、減量・中止時の離脱症状により、中止が困難化します。

依存性関連の副作用が添付文書に記載されているベンゾジアゼピン系の催眠鎮静薬・抗不安薬・抗てんかん薬一覧

ベンゾジアゼピン受容体作動薬(催眠鎮静薬・抗不安薬)

ベンゾジアゼピン受容体作動薬(抗てんかん薬)

長期投与は最も依存を形成しやすい

「臨床用量依存」であっても、通常の依存であっても、依存形成の最大のリスク因子は長期投与です。

BZ系薬の長期使用によって、依存形成がなされると、減薬時には離脱症状を生じ、中止は困難となり、さらなる長期使用につながってしまいます。

また、頓用使用と多剤併用は、BZ系薬の高用量使用につながり、高用量は結果として、長期使用につながりやすいことになります。

短時間作用型は依存を形成しやすい

BZ系薬の特性としては、短時間作用型であることが、離脱症状を自覚しやすいことと関連し、依存形成プロセスに影響します。

依存の問題を回避するためには、これらのリスク因子を避けることが望ましいと言えます。

BZ系薬の使用にあたっては、

    • 症状寛解後には中止を検討し、長期に漫然と使用しないこと
    • 十分な効果が得られなかった際に、複数の薬剤の併用は避けるようにする

といった対応が必要となります。

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、医療従事者に向けて、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について注意喚起をおこなっています。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について

睡眠薬は補助的な薬です

睡眠薬とは、「眠る力」が足りない時に一時的に使う、補助的な薬です。

「眠る力」というのは、何かの理由で一時的に弱まることはあっても、無くなることはありません。

依存性が形成されてしまうと、 睡眠薬無しでは、耐えられない、睡眠薬に支配された生活となってしまいます。

不眠の問題が解決しても、「依存症」という別の病気になってしまいます。

依存性が出やすい薬の特徴

    • 薬の効果が強いものほど依存になりやすい
    • 薬の半減期(作用時間)が短いほど依存になりやすい
    • 薬の内服期間が長いほど依存になりやすい
    • 薬の服用量が多いほど依存になりやすい

半減期とは

ベンゾジアゼピン系薬の耐性

ベンゾジアゼピン系薬剤は、GABA受容体上のブースター部に結合し、GABAの働きを賦活化(ふかつか)させます。

ベンゾジアゼピンがGABAの働きを賦活化させると、GABA受容体は、以前より少なくても同程度の働きがされるようになり、消滅していきます。

BZ系薬を長期間(2週間〜4週間)以上服用すると、GABA受容体が減少していき、耐性が形成されます。

GABA受容体が減少するという事は、人体が持つ抑制作用の能力が低下するという事で、興奮と抑制のバランスが取れなくなり、薬がないと抑制が効かない体になっていきます。

精神不安定、不眠、痙攣等に悩まされるようになり、薬を増やさないと効き目を感じなくなるのです。

GABA受容体が減少すると、1日ごとに気分や体調が変化します。

ベンゾジアゼピンの量を増やせば、更にGABA受容体の減少が進むという、悪循環になります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬と耐性の問題

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬も、基本的に「一時的に使う薬」で、「ずっと飲む薬ではない」という認識を持って、服薬してください。

不眠の症状が改善してきたら、中止や減量を検討するようにしてください。

漫然と使っていると、徐々に耐性がついてしまい、薬が効きにくくなり、服薬量がどんどん増えてしまいます。

BZ系睡眠薬は、『眠らせる薬』ですが、『眠れる体質にする薬』ではありません。

唯一、違った睡眠作用で、『眠れる体質になれる睡眠薬』は、 バラ色の夢を見る睡眠薬:ロゼレム(ラメルテオン) です。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用はNG

ベンゾジアゼピン系の薬剤とアルコールは作用機序が似ている点があり、お互いの作用を強めあってしまうので、一緒に使ってはいけません。

併用すると、いつもよりお酒が回りやすくなったり、睡眠薬が効きすぎたりしてしまいます。

また、お互いの作用が強まった状態になるため、依存もより急速に形成されてしまいます。

ベンゾジアゼピン系薬剤はGABA受容体に悪い影響を与える

ベンゾジアゼピン系薬剤は、GABAの働きを賦活化(ふかつか)させます。

GABA(ギャバ)とは脳内化学物質で、GABA受容体と結合すると、抑制作用として働きます。

BZ系薬による、GABA 抑制機能の賦活化の結果、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、セロトニン、アセチルコリン、ドーパミンを含む脳内の興奮性神経伝達物質の出力は減少します。

これらの興奮性神経伝達物質は

    • 正常な注意力
    • 記憶
    • 筋緊張
    • 協調運動
    • 情動反応
    • 内分泌作用
    • 心拍数・血圧のコントロール
    • その他多くの機能

に欠かせないものですが、これら全てがベンゾジアゼピンによって損なわれる可能性があります。

ベンゾジアゼピン系薬剤を服用する事は、抑制作用と興奮作用のバランスを失うことに繋がります。

バランスを回復するためには、ベンゾジアゼピン系薬剤をゆっくり減らして、GABA受容体の回復を待つことになります。

GABA受容体の回復には時間がかかります。

GABA受容体の減少による悪循環

GABA受容体に何らかの形で作用して抑制に働く薬は、

    • バルビツール酸系
    • ベンゾジアゼピン系(チエノジアゼピン系を含む)
    • 非ベンゾジアゼピン系
    • エタノール

があります。

GABA受容体に作用する薬を、睡眠薬や抗不安薬として用いる場合、

『眠りたい』、『不安な気持ちを抑えたい』という患者の欲求に対して医師が応え続けると、治療の長期化につながっていくことになります。

睡眠薬は眠らせる力はありますが、眠れる体質にしてくれるわけではありません。

抗不安薬は不安を感じにくくするだけで、不安の元は無くしてくれるわけではありません。

GABA受容体に働きかける睡眠薬や抗不安薬を継続すると、GABA受容体の感度の低下や減少が進みます。

薬がなければ、『眠れない』、『不安でしょうがない』という、状態になってしまいます。

結局のところ、睡眠薬は不眠体質を作る薬であり、抗不安薬は不安に対して弱くなる体質を作る薬と言えます。