5-HT1A受容体部分作動薬とは
5-HT1A受容体部分作動薬【5-HT1A partial agonist】
【5-HT1A受容体部分作動薬】は、
非ベンゾジアゼピン系(非BZD系)とも呼ばれ、BZD系(ベンゾジアゼピン系)の短所を補うものとして開発された薬剤です。
セロトニン受容体の一種の【5-HT1受容体】という受容体にのみ、作用します。
5-HT1Aとは、セロトニン受容体の一種です。
5-HT1A受容体部分作動薬の特徴
- ベンゾジアゼピン(BZD)系薬の欠点を克服する為に開発された薬剤です。
- BZD系薬剤のような依存性は、ありません。
- 筋弛緩作用や鎮静作用による有害作用も認められず、極めて安全性の高い薬剤です。
- アルコールとの相互作用も認められません。
- ただし、効果発現までに2~4週間かかることと、ベンゾジアゼピン系薬で、十分な治療効果が得られなかった患者では、効果が劣るという欠点があります。
2017年現在、日本で販売されている、【5-HT1A受容体部分作動薬】は、クエン酸タンドスピロン(セディール)だけです。
海外では、ブスピロン、ジェロピン、イサピロンが普及しています。
特に、塩酸ブスピロン(商品名:バスパー)は、”悪魔の薬=デパス”が個人輸入を禁止されてから、安全な代わりの薬として、人気があります。
インターネット通販で買えるバスパー&ジェネリック(塩酸ブスピロン)
5-HT1A受容体部分作動薬の種類
- タンドスピロン
- イプサピロン
- ブスピロン
タンドスピロン
タンドスピロンtandospirone(クエン酸タンドスピロン:セディール Sediel®)
セロトニン5-HT1A受容体作動薬、アザピロン系の抗不安薬
住友製薬(現、大日本住友製薬)が中国で1996年に開発した。
心身症からくる不安・緊張・抑うつ・睡眠障害および、自律神経失調症や神経症などに適応がある。
効果の発現には時間がかかり、2~4週間程度が必要とされる。
代表的な抗不安薬であるベンゾジアゼピン系薬剤と比較して筋弛緩作用や依存性などの有害事象が少なく、高齢者に使いやすい。
大脳辺縁系に高密度に分布する5HT1A受容体を選択的に刺激し、セロトニン神経系の神経活動を抑制することによって、抗不安作用と抗うつ作用を示す。
セロトニン5HT1A自己受容体と結合し、一時的にセロトニンの放出を抑制し、神経終末の小胞体内に蓄積される。
反復投与により自己受容体数を正常な数まで減少させると同時にタンドスピロンに対する自己抗体の感受性が低下する。これらの結果、セロトニンの放出の抑制が解除され、抗うつ作用を発揮する。
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イプサピロン
イプサピロン ipsapirone(®)
セロトニン5-HT1A受容体作動薬、アザピロン系の抗不安薬
セロトニン系副作用の多発により脱落
ブスピロン
ブスピロン(®)
セロトニン5-HT1A受容体作動薬、アザピロン系の抗不安薬、日本では厚労省が認可していません。
1970年頃、ブリストール・マイヤーズ・スクイブ社によって合成されました。
1985年、初めて西ドイツで医薬品として認可されました。
ブリストル=マイヤーズ社が、ドーパミン受容体に拮抗する新しい抗精神病薬として開発したが、抗精神病効果よりもむしろ抗不安効果に優れていることが明らかとなり、類似物質のイプサピロン等と共に、アザピロン系抗不安薬と分類されました。
ブスピロンの投与は単回投与では効果は現れず、1〜2週間してから効果が現れます。
アザピロン系抗不安薬はベンゾジアゼピン系抗不安薬でみられる乱用、依存、耐性、退薬症状などを引き起こさない。
日本で行われた臨床試験では、ブスピロンは抗不安効果においては、プラセボを上回ることができず、導入は断念されました。
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部分作動薬
部分作動薬とは、全体的ではなく、特定の場所にだけ、作用する薬です。
部分的に作用する薬剤のことを、『部分作動薬=パーシャルアゴニスト』と呼びます。
5-HT1A受容体部分作動薬の作用の仕組み
- セロトニン神経がセロトニンを放出すると、5-HT2受容体( 5-HT2A、5-HT2B、5-HT2Cの3種類あります。 )を介して不安を引き起こします。
- 一方、セロトニン神経は、5-HT1A受容体も持っていて、こちらは、セロトニン放出を抑制する方向に働きます。
- 健康な人の場合は、セロトニン神経は、【5-HT1】と【5-HT2】の働きを、上手にコントロールし、バランスを取っているのですが、5-HT1A受容体の働きが悪いと、5-HT2受容体の働きだけが勝ってしまい、結果、不安が強くなるわけです。
- 【5-HT1A受容体部分作動薬】は、5-HT1A受容体にだけ作動し、セロトニンの放出を制限するので、不安が治まるのです。
これが、『抗不安作用』の、メカニズム(仕組み)です。
セディール(タンドスピロンクエン酸塩)が有効な疾患
5-HT1A受容体部分作動薬の有効性が実証されている疾患
- 不安障害
- うつ病
- 本態性高血圧
- 心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群)
5-HT1A受容体部分作動薬の有効性が期待される疾患
- 強迫性障害
- アルコール依存症
- 過食症
- 統合失調症(陰性症状)