SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬について
選択的セロトニン再取込阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors
セロトニントランスポーターにだけ結合し、
その他の受容体にはほとんど作用しないため、
抗うつ薬特有の副作用も少ないという作用特性を持つ薬を、
「選択的セロトニン再取込阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)」と呼び、
【SSRI】と略称されています。
三環系の抗うつ剤は作りが荒いため、モノアミン以外の様々なところにも作用してしまい、副作用を起こしてしまいます。
モノアミンだけに選択的に作用して余計なところに作用しなければ効果もあって副作用も少ない抗うつ剤になるはずだと考え、開発されたのがSSRIです。
SSRIは、モノアミンのうち特にセロトニンだけを選択的に増やす作用に優れ、特に命に関わるような重篤な副作用はほとんどなくなりました。
SSRIは副作用が少なく、抗うつ効果もしっかりあり、現在のうつ病治療の第一選択になっています。
セロトニン再取り込み阻害とは
SSRI=Selective Serotonin Reuptake Inhibitors
- Selective=選択的
- Serotonin=セロトニン
- Reuptake=再取り込み
- Inhibitors=阻害
- SSRIは神経細胞に蓋(ふた)をすることで、セロトニンの再取り込みを阻害します。
- 再取り込みが阻害されることで、脳内神経のセロトニン量が維持されます。
- 脳内にセロトニンが豊富にあることで、うつ状態が改善されます。
- SSRIが、他の抗うつ薬と大きく違うところは、セロトニンにのみ作用することです。
抗うつ薬として使われるSSRIは、日本での承認薬は4種類です。
SSRI薬の比較~効能・効果
SSRI薬4種類の比較表~薬価・限度量・用途・劇薬指定
セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)は、今のところ強迫性障害の治療薬としては認可されていません。
副作用について~比較表
従来の抗うつ薬は、セロトニン以外にも作用するため、副作用が出る場合が多かったのですが、SSRIは、副作用が少ないのが特徴です。
力価・血中濃度・半減期
Tmax:最高濃度到達時間=薬に効き目が一番強くなる時間
T1/2:消失半減期=薬の効き目が半分になる時間
”T”は、”Time:タイム:時間”のことですね。
正常な代謝能力をもつ人 EM Extensive Metabolizer
欠損or著しく低い代謝能をもつ人 PM Poor Metabolizer
EMとPMの中間の代謝能をもつ人 IM Intermidiate Metabolizer
著しく高い代謝能をもつ人 UM Ultrarapid Metabolizer
鬱病(うつびょう)とセロトニンの関係
セロトニンは、ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、コントロールし、脳やカラダのバランスを正常に整える作用があります。
セロトニンは、人の気分に大きく関係しており、主に、『安心』に関係する情報を伝えます。
- セロトニンの分泌が多い人は、精神が安定している
- 不足すると不安を感じるようになったり、時にはうつ病の症状が出たりする
うつ病が起こる原因の1つとして、うつ病の人の脳の中では、神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンが非常に少なくなっていると考えられています。
また、セロトニンが不足すると感情にブレーキがかかりにくくなって、快楽におぼれ、依存症に陥ったりもします。
- 健康な時は、セロトニンの量が一定に保たれています。
- セロトニンが減ると、神経伝達が上手くできなくなり、うつ状態になります。
- SSRI薬を使うことで、セロトニンの減少を食い止め、うつ症状が改善されます。
再取り込みが行われる理由・訳
神経伝達物質は、神経細胞から出て別の神経細胞の表面にある受容体にくっつくことで情報を伝達していますが、使われないで余ると、またもとの神経細胞に取り込まれていきます。
神経伝達物質の一種であるセロトニンも、神経間(シナプス間)に放出されたままでいると、いつまでも伝達が続くことになります。
そのため、必要な情報の伝達が終わると、セロトニンは、セロトニントランスポーターによって、神経内に戻されるのです。
しかし、放出と取り込みのバランスが正常に保たれなくなると、セロトニンの量が低下して、うつ病やパニック障害を引き起こすとされています。
選択的にセロトニンだけに作用するという意味
うつ病の原因は未だ解明されていませんが、脳内のセロトニンとノルアドレナリンという2種類の物質が大きく関与していると考えられています。
抗うつ薬は、セロトニンとノルアドレナリンの量を増やし、脳の活動を活発にして、症状を良くしようとするものです。
現在の抗うつ薬の主流であるSSRI(セロトニン再吸収阻害薬)は、神経のセロトニン濃度を高める作用があります。
- セロトニンを再取り込みするセロトニントランスポーターの働きを阻害すると
- 脳内シナプス間隙にセロトニンが残ったままになるので
- セロトニン濃度が高まり、神経の伝達がよくなります。
結果として、うつ状態が改善され、気分が楽になると考えられます。
そして、
SSRIが、他の抗うつ薬と大きく違うところは、セロトニンにのみ作用することです。
SSRIは、セロトニンの配達役である”セロトニントランスポーター”にだけ結合し、その他の受容体にはほとんど作用しません。
そのため、抗うつ薬特有の副作用も少ないという作用特性を持つので、
「選択的セロトニン再取込阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)」と呼ばれます。
月経前不快気分障害(PMDD)の治療も、SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)を用いて行われます。
セロトニンを増やすのではなく、減らさないという仕組み・作用
神経伝達物質は、神経細胞から出て別の神経細胞の表面にある受容体にくっつくことで情報を伝達していますが、使われないで余ると、もとの神経細胞に取り込まれていきます。
これが、『再取り込み』ですね。
再取り込みをブロックしてもとに戻らないようにすると、神経伝達物質は神経細胞間にとどまるので、神経伝達が促進されます。
これが、抗うつ薬の仕組みです。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、セロトニンの再取り込み阻害だけに作用し、
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害に作用します。
抗うつ薬が脳の神経細胞を回復させるのには時間がかかるので、効果が出るのには、時間がかかると考えられています。
三環系や非三環系の抗うつ薬
三環系や非三環系の抗うつ薬も、セロトニンとノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害しますが、うつ病に関係のないアセチルコリンやヒスタミンなどの神経伝達物質の受容体にまで作用します。
強迫性障害とSSRI薬
強迫性障害(きょうはくせいしょうがい:Obsessive–compulsive disorder=OCD)
SSRIのうち、OCDの治療薬として日本で認可されているものは、フルボキサミンとパロキセチンです。
製薬会社によって、違う商品名で発売されています。
フルボキサミンとパロキセチンでは、服薬の回数が違います。