セロトニンについて

セロトニン(Serotonin)の特徴

セロトニン=Serotonin=5-Hydroxytryptamine(5-ヒドロキシトリプタミン)=5HTセロトニン

セロトニンは、『ノルアドレナリン』、『ドーパミン』と並んで、体内で特に重要な役割を果たしている3大神経伝達物質の一つです。

セロトニンは、生態内では 90%が消化管に、8%が血小板に、1-2%が中枢神経系に存在しており、睡眠、体温調節、性行動、摂食、神経内分泌、認知、記憶、生体リズムなどの生理機能に関与し、不安、攻撃性、衝動性、強迫、気分障害、統合失調症、自閉症、薬物依存などの病態と深く関係していることが知られています。

セロトニンは、『不安』に大きく関わっています。

セロトニンは、不安や気分の落ち込みに関わっている神経伝達物質です。

セロトニンの活動が減ってくると、不安が強くなり、抑うつ的になってきます。

仕事や家庭、友人、恋愛などの悩みが頭の中を占領すると、他のことを考える余裕が無くなり、集中できなくなります。

受験勉強や各種のテストでも、安定した精神状態が極めて重要です。

ストレスがたまって悩んでいる状態、仕事やプライベートで不安を抱えている状態では、力を発揮することは出来ません。

セロトニンの維持=安定した精神状態です。

セロトニンが関係する病気

    • うつ病
    • うつ状態
    • 社交不安障害(社会不安障害)
    • パニック障害
    • PTSD
    • 強迫性障害
    • 月経前症候群(PMS)
    • 月経前不快気分障害(PMDD)

などの疾患と大きく関係しています。

セロトニンと不安発生の仕組み

セロトニン神経がセロトニンを放出すると

5-HT2受容体を介して不安を引き起こします。

5-HT1受容体は、セロトニン放出を抑制する方向に働きます。

こうして、セロトニン神経は自分自身で、セロトニンの出力量をコントロールしています。

しかし、不安障害の患者ではこの機構がうまく働きません。

具体的には、セロトニン神経の5-HT1受容体が減少しており、セロトニンの出力を制御できなくなっているのです。

結果として、不安が収まらない状態が続くようになります。

セロトニンは、気分にかかわる神経伝達物質です。

不足すると、不安を感じるようになったり、時にはうつ病の症状が出たりします。

良く使われる薬

セロトニンの不足による、精神症状を治めるのが、

【選択的セロトニン再取込阻害薬】と呼ばれる薬です。

選択的セロトニン再取込阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)は、【SSRI】と略称されます。

SSRIは、他の受容体にはほとんど作用せず、セロトニントランスポーターにだけ結合することで、

抗うつ薬特有の副作用も少ないという作用特性を持ちます。

SSRIの作用の仕組みは、こんな感じです。

  1. セロトニンを再取り込みするセロトニントランスポーターの働きを阻害すると
  2. 脳内シナプス間隙のセロトニン濃度が高まり
  3. 神経の伝達がよくなる
  4. 結果として、うつ状態が改善され、気分が楽になる

SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬について

抗うつ薬として使われるSSRIは、主に4種類です。

  1. ジェイゾロフト(成分名セルトラリン)
  2. パキシル(成分名パロキセチン)
  3. ルボックスとデプロメール(成分名フルボキサミン)
  4. レクサプロ(成分名:エスシタロプラム)

その他では、

セディール(5-HT1A作動薬 ⇒抗不安・抗うつ

リフレックス・レメロン(5-HT3拮抗薬 )⇒悪心、消化器症状(下痢、吐き気)

リフレックス・レメロン(5-HT2A拮抗薬 )⇒性機能障害

リフレックス・レメロン(5-HT2C拮抗薬 )⇒不安・不眠・食欲減退

セロトニンが不足する原因

セロトニンは、不安や気分の落ち込みに関わっている神経伝達物質です。

セロトニンの活動が減ってくると、不安が強くなり、抑うつ的になってきます。

    • コンピュータ、テレビ、ゲーム等による昼夜逆転や睡眠不足
    • 運動不足
    • 有酸素運動の不足
    • 日光に当たっていない
    • トリプトファンを含む食品の摂取不足

セロトニンの役割・作用

    • ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、コントロールし、脳や身体のバランスを正常に整える作用がある。
    • 人の気分に大きく関係している。
    • 主に、人を安心させるような情報を伝える。
    • セロトニンの分泌が多い人は、精神が安定している。
    • セロトニンが不足すると、不安を感じるようになったり、鬱(うつ)の症状が出たりする。
    • セロトニンが不足すると、感情にブレーキがかかりにくくなって、快楽におぼれ、依存症に陥ったりもする。

セロトニンのまとめ

  • セロトニンは、脳内の神経伝達物質の一種である。
  • セロトニンは、必須アミノ酸であるトリプトファンの代謝過程で生成される。
    • セロトニンは鎮静系ホルモンで、興奮系ホルモンのノルアドレナリン(怒り、恐怖、不安)やドーパミン(快感、高揚感、多好感)の暴走を抑えコントロールし、脳やカラダのバランスを正常に整える作用がある。
    • セロトニンは、他の神経伝達物質であるドーパミン(喜び、快楽)、ノルアドレナリン(恐れ、驚き)などの情報をコントロールし、精神を安定させる作用がある。
    • セロトニンが不足すると、感情にブレーキがかかりにくくなり、快楽から抜け出せず、依存症に陥ったりする。
  • セロトニンが不足すると、不安を感じるようになったり、時にはうつ病の症状が出たりする
  • セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから5-ヒドロキシトリプトファン(5-hydroxytryptamine:5HT)を経てセロトニンになる。
  • ~そのため、【5-HT】と呼ぶ。
  • セロトニンは、動植物に広く分布する、生理的活性アミン(biogenic amines)の一種で、インドールアミンに属する。
  • セロトニンは、血清(serum)中に存在する血管収縮物質として発見されたので、【serotonin】という名前がついた。
  • 人体には10mgのセロトニンが存在する。
  • ~消化管粘膜に約90%、 血小板に約8%、 中枢神経系に2%
  • セロトニンは、覚醒・睡眠リズム、不安、情動と関連を持っていると言われている。
  • セロトニンは、血液凝固・血管収縮、疼痛閾値の調節、脳血管の収縮活動の調節、睡眠、体温、情緒・気分、食欲、嘔吐、性に関係する。
  • セロトニンは、皮膚や筋肉に分布する痛覚受容器に作用して痛みを起こす。
  • ~濃度が低いと、物理的刺激や他の発痛物質(たとえばブラジキニン)の発痛作用を増強する。
  • セロトニンの受容体には5-HT1~5-HT7が存在しており、その中でさらに5-HT1A、5-HT1Bなどとサブタイプが存在している。
  • 血小板は、小腸のエンテロクロマフィン細胞が産生・放出したセロトニンを能動的に取り込み、 濃染顆粒に蓄える。
  • 血小板のセロトニンは、血小板が凝集すると放出される。
  • 中枢神経系のセロトニン作動性ニューロンは 縫線核など脳幹から大脳・脊髄に広範囲に投射される。
  • 縫線核は痛み・睡眠・記憶などに加えて、恐怖やストレスの制御に関与することが知られる。
  • セロトニン神経細胞の多くが縫線核に局在し、大脳皮質・基底核などさまざまな領域へセロトニンを送り出す。~縫線核(raphe nucleus)=脳幹正中部に位置する神経核のこと。
  • 脳血管はセロトニン受容体が分布、セロトニン神経支配を受けている。
  • ヒトの中枢神経系ではセロトニン作動性の神経が精神活動に重要な役割を担っているとされる。
  • セロトニンは腸管でも合成され、腸管運動に直接作用するほか、末梢血管抵抗の維持にも重要とされる。

セロトニン受容体について

セロトニン受容体は

5-HT1から5-HT7の7種類のサブファミリーからなり、14個のサブタイプが存在します。

サブタイプとは?

ある特定の受容体において(例えばセロトニン受容体です)、タイプによって細かく分類した受容体(例えば5-HT1、5-HT2など)をさらに細かく分類したそれぞれについて(例えば5-HT1A)サブタイプと呼びます。

受容体

  • 受容体タイプ1
  • 受容体タイプ2
  • 受容体タイプ3
  • 受容体タイプ4

受容体タイプ1

  • サブタイプ1
  • サブタイプ2
  • サブタイプ3
  • サブタイプ4

受容体タイプ2

  • サブタイプ1
  • サブタイプ2
  • サブタイプ3
  • サブタイプ4

受容体タイプ3

  • サブタイプ1
  • サブタイプ2
  • サブタイプ3
  • サブタイプ4

5-HT1受容体

  • 5-HT1A
  • 5-HT1B
  • 5-HT1D
  • 5-HT1E
  • 5-HT1F

の5個のサブタイプがあります。

5-HT2受容体

  • 5-HT2A
  • 5-HT2B
  • 5-HT2C

の3個のサブタイプがあります。

5-HT3受容体

イオンチャネル型の受容体です。

  • 5-HT3A
  • 5-HT3B
  • 5-HT3C
  • 5-HT3D
  • 5-HT3E

の5個のサブタイプがあります。

5-HT4受容体

サブタイプはありません。

5-HT5受容体

サブタイプはありません。

5-HT6受容体

サブタイプはありません。

5-HT7受容体

サブタイプはありません。

イオンチャネル型の5-HT3を除いて他は、全てGTP結合蛋白質に共役する受容体で、遅い膜電位変化やシナプス伝達の修飾に関与します。

脳には全ての受容体が発現しています。

セロトニンに関わる病態・精神疾患

  • うつ病
  • パニック障害
  • 強迫性障害
  • 片頭痛
  • 慢性疼痛障害
  • 睡眠障害
  • 摂食障害

精神疾患と関連するセロトニン受容体(5HT受容体)

  • 不安=5HT1A、5HT2、5HT3
  • うつ病=5HT1A、5HT2
  • 強迫神経症=5HT1A、5HT2
  • 分裂病(陰性症状)=5HT2
  • 片頭痛=5HT1D、5HT2
  • 摂食障害=5HT1A