睡眠薬の分類・比較~作用・副作用・効果・半減期等

睡眠薬の系統・種類

日本の医療機関で主に用いられる睡眠薬には、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動系、オレキシン受容体阻害系の各睡眠薬と催眠・鎮静系の抗うつ薬があります。

    1. ベンゾジアゼピン系睡眠薬
    2. 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
    3. メラトニン受容体作動薬
    4. オレキシン受容体阻害薬
    5. 催眠・鎮静系抗うつ薬

それぞれの睡眠薬は、消失半減期、抗不安作用の有無、リズム調整効果の有無など作用特性が異なります。

各薬剤間で、不眠症の改善効果自体には、大きな差はありませんが、副作用の重さ、種類、頻度には大きな差があります。

作用時間による睡眠薬の分類と選び方

睡眠薬は作用時間の長さ(効果の持続時間)によって、4つのタイプに分かれます。

最も薬の効き目が表れる時間は、最高血中濃度で、

薬の持続時間は、血中濃度半減期でおおよそ決まります。

    1. 超短時間作用型=服薬後、1時間未満で最も効き、2~4時間で効果がなくなる
    2. 短時間作用型=服薬後、1~3時間で最も効き、6~10時間で効果がなくなる
    3. 中間作用型=服薬後、1~3時間で最も効き、24時間前後で効果がなくなる
    4. 長時間作用型=服薬後、3~5時間で最も効き、24時間以上効果が持続する

睡眠障害について

睡眠薬の処方制限(投与制限)一覧

くの睡眠薬には、『投与制限』が付けられています。

つまり、病院で処方してもらうとき、一回で処方してもらえる日数に制限が与えられているので、好きなだけ、欲しいだけもらうことが出来ません。

投与制限がない睡眠薬一覧

不眠のタイプと睡眠薬の半減期・作用時間の比較一覧

日本睡眠学会のガイドラインにも「不眠症の改善効果は各薬剤間で大きな差はありません」と記載されていますが、

どの睡眠薬を使ったとしても、薬の強さにはほとんど違いがありません。

ピーク時の強さは同じだが、一番薬が効く時間帯に違いがあるということです。

睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン

「長時間型の方が強そうだ」と勘違いしている方がいますが、「長く効く=薬が強い」ではありません。

最高血中濃度と半減期と定常状態

睡眠薬の規制区分と薬効分類一覧表

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、超短時間タイプから長短時間タイプまで、バラエティに富んでいますが、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、短時間タイプと超短時間タイプになります。

ベンゾジアゼピン系(ベンゾジアゼピン受容体作動薬)

非ベンゾジアゼピン系

習慣性医薬品とは

睡眠薬の特徴~系統別

睡眠薬の作用比較表

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、血中濃度半減期によって超短時間作用型から長時間作用型までに分類され、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害といった患者の症状に合わせて選択されています。

メラトニン受容体作動薬は「不眠症における入眠困難の改善」が適応となっています。

人によっては、複数の睡眠困難の症状を合わせ持っていますし、経過中に不眠のタイプが変化したりすることも考えられ、1種類の不眠症治療薬で十分な効果が得られない場合などに2種類、3種類の併用が行われることもあるのですが、併用療法については、近年の診療ガイドラインや診療報酬上の評価は消極的になっています。

オレキシン受容体阻害薬は、入眠困難と中途覚醒の双方に効果が得られ、かつ持ち越し効果のリスクが低く、時代のニーズに合っているのでしょう。

副作用の比較

睡眠薬・不眠症治療薬の市場は、ロラゼパムやテマゼパムなどのベンゾジアゼピン(BZ)系の薬剤および、ゾルピデムやゾピクロンなどの非ベンゾジアゼピンの薬剤が主流となっています。

BZ系、非BZ系は共に、GABA神経伝達システムに作用を及ぼし、中枢神経系への広範囲な阻害効果を有します。

中枢神経系への広範囲な阻害効果は、記憶障害(健忘)をもたらし、翌日に鎮静が生じたり、使用を中断することによって不眠症がリバウンドすることがあります。

さらに、どちらの薬物も、習慣性や依存性を促進する可能性があります。

BZ系や非BZ系の睡眠剤は、断続的に、短期的に使用されるべきですが、多くの医者が、副作用の問題を無視して、慢性的に処方しています。

BZ系や非BZ系の薬剤の有害事象プロファイルや、長期間の使用は制限されるという推奨事項からは、他のオプションの選択肢が必要となるのです。

入眠困難や睡眠維持障害の双方の不眠症を有する患者では、BZ系や非BZ系の薬剤で治療することは困難かもしれないのです。

非ベンゾジアゼピン系やベンゾジアゼピン系の睡眠薬には主に5つの副作用があります

    1. 耐性
    2. 依存性
    3. 眠気の持ち越し
    4. 健忘
    5. ふらつき

耐性

「耐性」とは、その薬を使い続けることにより、その薬の効き目に身体が慣れてしまい、同じ効果を得るためには、より多くの量を使用しなければならない状態になることです。

依存性

「依存性」とは、その薬が体内に入ってくることが当たり前になってしまい、その薬なしでは耐えられない状態になってしまうことをいいます。

眠気の持ち越し

「眠気の持ち越し」とは、睡眠作用が翌日まで残ってしまうことです。

特に、作用時間が長い睡眠薬の場合に、起こりやすい副作用です。

作用時間が短い睡眠薬の方が、眠気の持ち越しは起こりにくくなります。

健忘

「健忘」とは、睡眠薬を服用後、自分のしたことを忘れてしまうことをいいます。

服用後にすぐに寝てしまえばこのようなことは起こらないのですが、何かをしようとすると、そのしたことを忘れてしまうことがあります。

翌朝起きてみたら意外なところに意外なものが置いてあった、などは健忘の1つの例と言えます。

ふらつき

「ふらつき」とは、睡眠薬による眠気や筋弛緩作用(筋肉を和らげる作用)が原因で、身体の立位の保持が不安定になり、転倒などが起こりやすくなることです。

副作用によるふらつきを防ぐには、服用後すぐに寝てしまえば良いのですが、服用後に活動しようとすると起こりやすくなります。

特に、睡眠の途中でトイレに行くときなどには注意が必要な副作用と言えます。