発表要旨

【口頭発表】3月19日11:35-12:05

音象徴と身体性

篠原 和子(東京農工大学)

現代言語学では、ソシュール以来100年あまり、言語記号(能記と所記のむすびつき)の恣意性という概念が不動の地位を占めてきた。それに対し、近年、言語音がそれ自体としてなんらかのイメージやそれに伴う「身体化された意味の萌芽」に関わっている、という考え方が真剣に取り上げられつつある。言語の周辺的地位にあまんじていたかに見えるオノマトペやそれを支えている音象徴現象を正面から研究することが、まっとうな言語研究のひとつの領域であるという認識が、ようやく日の目を見始めている。本発表では、言語学の立場からの音象徴研究のスコープをやや広げ、身体科学、スポーツ科学との連携のなかで見えて来た音象徴の「身体性」を、言語研究の側から論じる。光点の運動を目視することや、器具を用いた腕の運動を経験することが、ある種の言語音と偶然ではなく結びつくことを、身体運動を採り入れた実験研究を通じて紹介する。

【発表者プロフィール】

篠原和子(しのはら かずこ)は日本の言語学者、認知科学者、東京農工大学大学院工学研究院教授。専門は、認知意味論,概念メタファー理論,空間認知,時間概念,音象徴。

主な著作

Iconicity: East meets West. (John Benjamins, 2015)

『オノマトペ研究の射程:近づく音と意味』(ひつじ書房, 2013)『ことば・空間・身体』(ひつじ書房, 2008)