阿弥陀町の家

鹿島神社参道に面した寺社と庫裏の複合建物です。 中央の切妻面の見える架構は既存拝殿を移動して再利用したものです。 再生された既存拝殿を中心に据えて奥に本殿。左手にガラス張りの談話室。右手に受付カウンターが並びます。

参道に面した拝殿はこの建築のシンボルです。そして参道を行き来する多くの参拝者の記憶に残っているであろう存在です。まち並みの風景として、記憶につながる新しい風景になればと思います。

傷んでいた柱や梁は耐震的考慮を含めて新しくしています。費用はかかっても既存のものを再利用することは、それに替えることのできない大きな意味のあることと考えます。

植栽が緩やかに参道と区切りをつけて、参拝者が気軽に立ち寄ることのできる魅力的なオープンスペースが誕生しました。

姫路「リビングソイル研究所」の西山さんに、植栽デザインと施工を担当してもらいました。既存の石を使ってすっきりとしたデザインです。

参道に面してガラス張りの談話室が張り出します。深い軒に守られた談話室の入り口は、歩き疲れた参拝者を心地よく迎えてくれます。

向い合う拝殿側の開口も引戸とし、お正月の参拝など「ハレ」の際には両方の開口部を開け放しにして、参道に面した外部スペースと一体に利用ができるように考えています。

談話室から見た参道の風景です。行き来する参拝者を見ながら、参拝後の時間をゆったりと過ごすことができるスペースとなっています。また、音楽を介した交流など多目的な利用も想定しており、グランドピアノが設置されています。天井は吸音効果を期待し、杉板に吸音スリットを設けています。

こちらは庫裏のリビング。段差のある東庭に面して跳ね出しのデッキを設け、深い軒を出しています。引き込みの障子を通した柔らかい自然光は時刻とともに変化し、LED間接照明の明かりと合わせて、室内をやさしい光で満たします。

引込みの障子は開閉により、内外のつながり具合を調整することができます。

引き込みの障子を通した柔らかい自然光は時刻とともに変化し、LED間接照明の明かりと合わせて、室内をやさしい光で満たします。

畳み敷きのリビングは中央を掘り込み、特注座卓としました。井藤工務店さんと日頃から協働されている広島県府中市の若葉家具さん製作。布団を使用しないときにも、シャープでやさしい表情のテーブルです。