万能型の物情生にオススメ!対応力抜群の顕微鏡

AM-AFM

物理情報工学の学生は幅広い分野の知識をもち、可能性に満ち溢れています。私たち清水研究室で扱っている原子間力顕微鏡(AFM)は、環境や材料にあまり制限がなく測定ができ、まさに、柔軟な対応ができる物情生にぴったりな顕微鏡だと思います。たとえば、AFMを使うと導電性、非導電性を問わず材料の表面を観察することも可能です。

このページではAFMの原理とメリット、デメリットについて、分かりやすく説明します。そして、AFMの幅広い可能性を感じていただけたら幸いです。

動作原理

カンチレバーという片方が固定され、もう片方が自由に動く薄い板の先端に長さが数μmほどの微小な探針がとりつけられています。その探針を図1のように試料表面上で走査させると、探針と試料間に働く原子間力(※)により、カンチレバーの反りが変移します。そしてその変移は、カンチレバーの背面に当てられたレーザーの反射光の位置変化として検出されます。また図○のように、AFMは試料台を動かすことで走査させています。

※補足:AFMが測定する原子間力

図1 AFMの動作原理

観察モード

AFMの観察モードは、大きくコンタクトモードとダイナミックモードに分けられます。AFMの初期においてはコンタクトモードが主流でしたが、最近はダイナミックモードが主流となっています。

コンタクトモードは探針と試料表面を近づけた際のカンチレバーの反りを検出します。上記の動作原理はコンタクトモードを表しています。しかし欠点として、試料の制限が多いことや、探針と試料の接触による破壊や変形が起こりやすいことがあります。

図2 コンタクトモードの走査イメージ

ダイナミックモードはカンチレバーを振動させた状態で探針を試料に近づけ、その時の振幅の変化を検出します。コンタクトモードと比べて、試料の制限が少なく、探針と試料の接触によるダメージも比較的少ないという特徴があります。またカンチレバーの振動の位相を同時に測定することで、表面形状の画像とともに、粘弾性などの物性の違いを画像として得ることができます。

図3 ダイナミックモードの走査イメージ

AFMが測定する原子間力とは探針と試料の間に働く力の総称で、ファンデルワールス力や静電気力、磁気力などが含まれます。図4のように、原子間力は引力領域と斥力領域に分けられます。コンタクトモードでは距離に依存して急激に原子間力が変化する斥力領域で測定を行い、ダイナミックモードでは引力領域で測定を行います。

図4 原子間距離と原子間力の関係

AFMのメリット・デメリット

続いて、これまでに説明した動作原理を踏まえ、AFMを実際に使用する上でのメリットとデメリットをまとめます。

[メリット]

  • 原子間力を検出して像を得るため、導電性のない試料も観察できる

  • 液中でも観察ができるなど、環境の制限が少ない

  • 大気中で測定できるため比較的簡単に測定ができ、試料の実際の使用環境を再現できる

[デメリット]

  • 原子は見えない

  • 探針がとてもデリケートで壊れやすい

実際に使用した清水研究室のメンバーからは、「カンチレバーの装着がとても細かい作業で手が震える…」「探針が折れた時に装着し直さなければいけないのが大変…」「肉眼じゃ見えない構造が見えたときには感動する!」といった感想が聞けました。

冒頭で述べたように、AFMは環境や材料の制限が少なく測定できるため幅広い用途で使用されてきました。実際に清水研究室では、ナノ粒子や多孔質薄膜の表面構造の観察に使用されています。多孔質薄膜は、図5(a)のように肉眼では平坦に見える表面でもAFMで観察すると(b)のように島のような像が得られます。

AFMでの観察は、まだ知られていない表面がどのような構造を形成するのか、という疑問を解決するための大事な手法の一つなのです。

図5 Si基板上に成膜した多孔質薄膜の肉眼での写真(a)とAFM画像(b)

Written by R. A., M. Y. , K. M., and K. Y.