エストロゲン~卵胞ホルモン

卵胞ホルモン(エストロゲン:Estrogen)とは

エストロゲンは、卵胞ホルモンとも呼ばれ、妊娠の準備を促すホルモンです。

英語読みなら=エストロジェン、ドイツ語読みなら=エストロゲンです。

エストロゲンは、子宮に作用して、卵子を包む卵胞を育て、受精卵のベッド(子宮内膜)を厚くし、精子が入ってきやすい環境に調える役割があります。

また、女性らしさを作るホルモンとして、乳房の発達、皮膚、骨、筋肉、脳、自律神経などの働きにも関係しています。

思春期から分泌量が多くなり、30代でピークに達し、更年期になると減少します。

エストロゲンの効果

  • 心臓病、脳卒中の予防
  • 悪玉コレステロールの低下
  • アルツハイマーの予防
  • 記憶力の向上
  • シワ、肌質、髪質の改善
  • 更年期障害諸症状の改善
  • 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防
  • 免疫力・代謝力の向上
  • 自律神経調節

エストロゲン不足時の症状

  • のぼせ
  • 膣の乾燥
  • 集中力・記憶力の低下
  • 体重、特に脂肪の増加
  • 自制心の消失
  • 皮膚・乳房のたるみ
  • 顔のしわの増加
  • 疲労・抑うつ・ストレス耐性の低下
  • 皮膚の菲薄化
  • 皮膚のしわ・しみ
  • オイリースキン・にきび
  • インシュリン抵抗性の増加
  • コレステロールの増加
  • 膣の乾燥
  • 骨粗しょう症
  • 尿路感染

エストロゲン過剰時の症状

  • 不正出血
  • むくみ
  • 頭痛
  • 精神的不安定
  • 乳がん・子宮がんの発症

エストロゲンの代表的な働き

エストロゲンには、免疫力や代謝力を高める働き、自律神経の調節、アルツハイマー病を予防するための酵素コリン・アセチルトランスフェラーゼの産生の刺激、大腸がんの発症率を抑制する働き等が知られています。

また、体内のカルシウム量の調節に深く関わるため、骨粗鬆症の予防に役立ちます。

一方で、エストロゲンは、多すぎると乳がんや子宮がんの発症率を高めると言われています。

血管・血液への影響

  • 血管を広げ、血圧を下げる
  • 動脈の弾力性を保ち、動脈硬化の進行を防ぐ
  • 血液の凝固能力を高める

内臓(肝臓・すい臓他)への影響

  • コレステロール調節機能があり、不足してくるとコレステロールが増える
  • HDL(善玉コレステロール)を増やし、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らす
  • インシュリン感受性を上げる

骨・皮膚・肌への影響

  • 皮脂腺の分泌を抑制する
  • コラーゲンの合成を促進し、保湿性を保つ
  • 骨の形成促進ホルモンの分泌を高める
  • 骨の代謝による骨吸収を抑え、骨量を保つ

女性生殖器への影響

  • 女性の子宮、卵巣、膣、乳房などの生殖器の発育を促す
  • 細菌から守り、妊娠しやすくさせる
  • 子宮の内膜を着床に備え増殖させる
  • 排卵直前に増えて排卵を促す
  • 膣粘膜の萎縮を防ぎ、バルトリン線液の分泌を促す

エストロゲン(卵胞ホルモン)の3つのタイプと働き

エストロゲンの種類

天然のエストロゲンには

  1. エストロン:Estrone(E1)
  2. エストラジオール:Estradiol(E2)
  3. エストリオール:Estriol(E3)

の3種類があります。

いずれもコレステロールが原料となり、DHEAや男性ホルモンからの酵素により、女性ホルモンに変換されて作られます。

DHEA⇒デヒドロエピアンドロステロン(Dehydroepiandrosterone)とは、副腎や性腺で産生される男性ホルモンの一種です。

生殖可能年齢の女性の場合、主に卵巣で、たくさんのエストラジオール(E2)が作られます。

閉経を迎えると、卵巣からは女性ホルモンは分泌されなくなり、副腎や脂肪組織などで、エストロン(E1)が多く作られるようになります。

エストリオール(E3)は、胎盤や肝臓で作られます。

それぞれの作用の強さは

  • エストラジオール(E2)⇒最もエストロゲン作用が強い
  • エストロン(E1)⇒E2作用の12分の1
  • エストリオール(E3)⇒最も弱く、E2の作用の80分の1

エストロン(E1)の働き

エストロン(E1)は、閉経後も主体となるエストロゲンです。

主にアンドロステンジオンの代謝によって生成される代謝産物です。

エストラジオールと比較すると、生理活性が低く、検査の指標としては適さない事が特徴です。

エストロンは卵巣・副腎・肝臓・脂肪組織で作られますが、

  • 閉経する前 ⇒⇒ 主に卵巣でエストラジオール(E2)に変換されます。
  • 閉経後 ⇒⇒ 卵巣が働かなくなるため、エストラジオールへの変換が行われなくなり、主に脂肪組織でエストロンが作られ、肝臓・副腎でも少し作られます。

そのため、閉経後に体脂肪が多いほど、エストロンがたくさん作られることになり、E1/E2比が高くなります。

お酒をたくさん飲む女性も、卵巣ホルモンが低下する為、エストロンが増えていくことになります。

エストロン値が高いと、乳腺や子宮の組織を刺激し、乳がん・子宮がんのリスクが高くなると言われています。

エストラジオール(E2)の働き

エストラジオールは、最も強力なエストロゲンであり、閉経前の主要なエストロゲンです。

卵胞の発育状態を確認する為に有効な、指標となるホルモン成分です。

エストロゲンの血液検査で成分分析される対象の大半は、このエストラジオールです。

子宮・卵巣の手術を受けた人では、エストラジオールのレベルが低くなる傾向があると言われています。

手術後に体調が悪くなった場合、ホルモンバランスをチェックすることも重要です。

妊娠中には、胎盤性エストロゲンとして、エストラジオールが活発に分泌されます。

エストロゲンは、閉経前は卵巣で作られますが、閉経と共に減少してしまう特徴を持っています。

ただし、女性の70%程度は、閉経後80歳位までは、少しずつですが、エストロゲンが分泌されていると言われています。

エストリオール(E3)の働き

エストリオールは、妊婦が妊娠後時間の経過と共に、数値が上昇するホルモンです。

エストロンやエストラジオールが、肝臓で変換されることで作られます。

ヨーロッパでは、長年にわたりホルモン療法に使われています。

出産間近になると、エストリオールは血中及び尿中のエストロゲン比率の9割を占めるようになり、妊娠の経過の指標となります。

エストリオール(E3)は、エストロンやエストラジオールよりも、乳腺や子宮に対する刺激が弱く、乳がん・子宮がんを誘発しないのみならず、むしろそれらのがんから守ってくれると言われています。

エストロゲンの不足が招くこと~卵胞ホルモンと色々な病気

更年期に入り卵巣が働かなくなると、エストラジオールが減少するために、全体としてエストロゲンの作用が激減してしまいます。

そして、閉経に伴うエストロゲンの低下は、更年期障害、骨粗鬆症、泌尿生殖器の萎縮症状、脂質異常症など様々な疾患を誘発します。

エストロゲンと骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

エストロゲンには、骨を破壊する破骨細胞の働きを抑えたり、カルシウムの吸収を助けることで骨密度を増加させ、丈夫な骨を維持する働きがあります。

更年期以降では、女性ホルモンの分泌は急速に減少します。

エストロゲンも、閉経になると、分泌が低下するのです。

そして、急速な骨量の減少が起こってきます。

すると、骨密度が低下して骨粗鬆症が起こりやすくなります。

閉経後の女性の骨粗鬆症は、男性の約3倍に達しています。

エストロゲンと動脈硬化(どうみゃくこうか)

エストロゲンは

  • 動脈硬化の原因となる、血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の増加を抑える働きがあります。
  • 動脈硬化を抑える、血中の善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす働きがあります。

女性ホルモンの分泌が盛んな時期は、動脈硬化や心臓病、高血圧などの病気になりにくいので、心・血管系の疾患の発症リスクは男性よりもずっと低くなります。

しかし、更年期以降になると、エストロゲンは急激に欠乏するので、心・血管系の病気が急増し、男性の頻度に近づきます。

天然ホルモン補充療法~HRT(Hormone Replacement Therapy)

卵胞ホルモン(エストロゲン)の低下は、更年期障害、骨粗鬆症、泌尿生殖器の萎縮症状、脂質異常症など様々な疾患を引き起こします。

HRTは、年齢とともに減少するホルモンを、貼り薬や飲み薬や塗り薬によって補充する療法です。

天然ホルモン補充療法について

エストロゲンの補充療法について

エストロゲンの補充療法によって、自律神経失調のために起こっていたさまざまな症状が軽くなります。

特にホットフラッシュや冷え、動悸など血管運動系の不調は改善されやすいといわれています。

また、皮膚や粘膜の乾燥や萎縮、骨密度の低下(骨粗しょう症)、コレステロール値の上昇なども、エストロゲンの補充で改善されやすくなります。

  • 皮膚の真皮層にコラーゲンやエラスチンを増やし、関節(肘、膝、肩、指、顎、腰、脊椎、股関節…)などの軟骨の代謝にも良い影響を与えます。
  • アルツハイマー等の認知症の発生率が非常に低くなります。
  • ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、多汗)、動悸、知覚異常など、自律神経系の不調を改善します。
  • 血管壁を柔軟にし、体内で悪玉コレステロールの分解と排泄を促します。
  • 善玉コレステロールの合成を促して脂質異常症を予防します。
  • 骨を破壊する細胞(破骨細胞)の生成を抑えて骨量増加を促し、骨粗しょう症を予防します。
  • 筋肉がほどよく張り、皺が減り、髪が輝きを取り戻します。
  • 肌の張りや潤い、柔軟性を保ちます。
  • 膣など粘膜の乾燥や痛みを改善します。
  • 脳内神経伝達物質セロトニンやノルアドレナリンの代謝を抑えることで、セロトニンの減少によるイライラ、無気力、集中力欠如、脱力感、不安感、不眠、頭痛などを改善します。
  • 抗酸化作用を持ち、心臓病や脳卒中のリスクが半減します。
  • 大腸がん、肺がん、子宮体がんのリスクを下げます。
  • 女性をより若く、またエネルギーを与え女性の日常生活の質をとても改善します。

エストロゲンが多すぎる場合

エストロゲンは、乳腺や子宮など女性器官への作用を強く持つホルモンです。

その為、エストロゲンが多すぎると、乳腺や子宮内膜へ過剰に働きかけることになり、それらの正常な状態を維持できなくなります。

ホルモンバランスが正常な場合は、抗エストロゲン作用のあるプロゲステロンが、エストロゲンの過剰な動きを抑えるのですが、プロゲステロンが不足すると、色々な弊害が生じるのです。

  • 乳腺を刺激し、良性乳腺疾患、乳がんの発症率を高める
  • 子宮内膜増殖症を起こし、子宮内膜症や、子宮内膜がんの発症率を高める
  • 子宮筋腫の発育を促進する

特にエストロゲン依存のがんにとって、エストロゲン過多は大変危険です。

エストロゲン依存とは、がん細胞にエストロゲン受容体が存在する、あるいはホルモン受容体の対エストロゲン感受性が陽性であるともいい、つまりは、エストロゲンががんの栄養になり、その発生・増殖を促進してしまうことを意味します。

エストロゲンの受容体は、ヒトの身体のあらゆる部位(脳、筋肉、骨、膀胱、腸、子宮、卵巣、膣、乳腺、眼、心臓、肺、血管など)に認められ、効果を発揮します。

この変換に関わるのが、アロマターゼという酵素で、主に卵巣の顆粒膜細胞に多く存在しますが、脳、血管、骨、脂肪組織、肝臓などにも存在しています。