ミニピル
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第1世代 | 卵胞ホルモンのエストロゲンを含まない経口避妊薬
黄体ホルモンのプロゲスチンのみを含むミニピルです。
そのため、喫煙をする方、授乳中の方、血栓症、高血圧、片頭痛のある方も安心して使用できます。
排卵後の女性の体の中では黄体ホルモン(プロゲステロン)が作られます。
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、排卵後や妊娠中に多くなるホルモンです。
性周期の初期からピルとして黄体ホルモン剤を摂取すると、妊娠しているのと同じようなホルモン状態が作り出され、排卵が起きません。
これがピルの基本原理です。
この基本原理からすれば、黄体ホルモン剤を摂取すれば避妊効果があるということになります。
実際、そのようなピルもあるのです。
黄体ホルモン単体のピルを「ミニピル」といいます。
海外では、経口避妊薬としてミニピルが販売されています。
日本でも、黄体ホルモン剤は使われていますが、もっぱら治療用に限られています。
ミニピルには、授乳中も使えるなどのメリットがありますが、少ない用量では十分な効き目がありません。
ミニピルに対して、一般にピルといわれている薬には、黄体ホルモン剤と卵胞ホルモン剤の両方が含まれています。
2つのホルモン剤が含まれているので、混合ホルモン剤といわれます。
混合ホルモン剤として使用するわけは、同じ用量でも単体で使うより効き目が強くなるからです。
ミニピルという種類の避妊用ピルの特性
普通の経口避妊薬のピルはコンビネーションピルと言って、エストロジェンとプロジェスティン という2種類のホルモンが配合されています。ミニピルにはプロジェスティンだけが含まれていて、エストロジェンは入っていません。
ミニピルはどんな場合に使うかと いうと、避妊は必要だけれど、エストロジェンは使えないという次のような場合です。
煙草
ピルの説明の稿に書きましたように、煙草を吸う人はエストロジェンを使うと 血栓症が多くなるので、エストロジェンを含まないミニピルの方が適しています。特に1日に15本以上煙草を吸う人にとっては普通のピルは危険です。また、年齢と共 に血栓症の可能性は増えるので、35才を過ぎて少しでも煙草を吸うようならエストロジェンは避けたほうが良いでしょう。もちろん煙草はその他の健康上の害が数多く 有るので、ピルが必要になったらそれをきっかけに止める努力をするのが一番です。
授乳中
母乳を与えている人は母乳の量が減るため、普通のピルは避けた方が良いと いわれています。ミニピルは母乳の量に影響がなく、また全体としてホルモン量が少ないので、授乳中に与えても良いピルと考えられています。医療従事者の中には、そ れほどエストロジェンに神経質になる必要はないという意見の人もいて、6ヵ月ぐらいになって離乳食を始めると同時にミニピルから普通のピルに変えたり、あるいはもっ と早く、6週間ぐらいからいきなり普通のピルを始める人もいます。一般的には断乳がすむまでミニピルを使い、その後で普通のピルに切り替えるというパターンが多い ようです。
血栓症
以前に血栓ができたことのある人や、家族に血栓のできやすい人が多い場合 などはエストロジェンを避けた方が安全です。そういう人にはミニピルが適しています。
高血圧
エストロジェンは少し血圧を上げる効果があることがわかっています。普通 の血圧の人にはこれはほとんど関係ありませんが、もともと高血圧のある人はエストロジェンの入っていないミニピルを利用した方が安全です。血圧が140/90以上 の人はエストロジェンの入ったピルは避けた方が良いでしょう。
偏頭痛
頭痛持ちの人は案外多いものですが、その中でも偏頭痛で視力に影響のある ものはエストロジェンと相性が悪いのです。頭痛の前に目がかすむ、目の前にカラーの幾何模様が見える、頭痛が始まると目の前が暗くなる、頭痛が始まると言葉がもつ れるなどの症状のある場合は、エストロジェンの入ったピルを飲むと脳卒中を起こす場合があります。これもミニピルならその心配がありません。
効果のメカニズム
ミニピルは普通のピルと違って、排卵を防ぐわけではないのです。人によっては排卵が起こらなくなる人もいますが、大概は月によって排卵があったりなかったりしているのです。では、どうして避妊ができるかというと、子宮の入り口の頚管というとこ ろの分泌液を濃くし、精子がそこを通過できなくしてしまうのです。また、子宮の内膜が厚く育つのを防ぎ、もし、万が一、受精卵が子宮の中にやってきても、着床できないのです。
飲み方
普通のピルは21日分のホルモンがあって、7日分の擬薬があるのが普通ですが、ミ ニピルは毎日同じ量のホルモンを休みなく飲み続けます。生理は自然の排卵によって左右されるので、定期的に生理の来る人もあれば、まったく生理がなくなってしまう 人もあります。不定期に少量の出血がある場合もあります。一般的に出血量は減るのが普通なので、貧血の強い人は助かります。ミニピルの効果は短く、25時間で無く なってしまいます。したがって、毎日決まった時間に飲むことが重要です。一時間以上、飲むのが遅れると効果がなくなってしまうのです。子宮頚管の粘液が濃くなるの は、ミニピルを飲んで4~5時間後なので、夜セックスをする習慣の人は夕食のころに飲むと必要なころに丁度効果が一番高くなります。理論的には普通のピルよりもい くらか避妊効果が低いといわれていますが、現実に使っている人の状況を考え合わせて総合的に判断すると普通のピルと同じ程度の避妊効果があります。
副作用
ミニピルの副作用で一番気をつけたいのはエストロジェンの不足です。エストロジェ ンには骨のカルシウムが溶け出すのを防ぐ働きがあるのですが、ミニピルを飲んでいる間はエストロジェンが不足するので、その恩恵にあずかれないわけです。特に10代の人は将来に向けて骨を太く強く育てる時期なので、ミニピルを飲み始めたら特に骨の健康に気をつけましょう。カルシウムやコラーゲンをとり、運動をすることによっ て骨を育てて将来の骨そしょう症を防ぎましょう。もう1つ、ミニピルの副作用として時々聞くのは抑欝症の悪化です。普通の人はミニ ピルを飲んだからといって別に影響はないのですが、もともと気が沈み、欝になった経験のある人はミニピルを飲むとひどくなる場合がまれにあります。逆にミニピルを 飲むことで軽くなる人もいるのですが、一応、処方してくれる人に相談して、症状の悪化に注意しましょう。
処方
ミニピルの処方を受けるためには、まず婦人科定期検診を受けて健康に異常のないこ とをたしかめます。銘柄としては、マイクロノア(Micronor)、ノアキュウディー(Nor-QD)、オブレット(Ovrette)などがあります。1ヵ月分20ドルから30ドル前 後のことが多いようです。ほとんどの薬局でミニピルを扱っています。
ミニピルの避妊メカニズム
ミニピルは、基本的には排卵を抑制しないピルです。
排卵頻度はミニピルの種類によってかなり異なりますが、
2周期に1回程度排卵が見られることもあります。
これが通常の混合ピルとの大きな違いです。
排卵を完全に抑止できないのに避妊が可能なのは、
3つのメカニズムによります。
1つは子宮頸管粘液の分泌により、
精子の侵入を防ぎます。
この点は通常の混合ピルと共通しています。
2つは輸卵作用の抑止です。
たとえ受精が成立しても、
受精卵は子宮にたどり着けずに消滅してしまいます。
これは緊急避妊のメカニズムと共通しています。
通常の混合ピルにも同様の作用はありますが、
排卵を抑止する混合ピルではあまり関係のないメカニズムです。
3つは子宮内膜の薄い状態が保たれますので、
着床条件が失われます。
同様のメカニズムは通常の混合ピルにもありますが、
ミニピルでは重要なメカニズムです。
ミニピルの服用では子宮内膜の増殖は極端に抑制されます。
消退出血がなくなったりおりものシートですむ程度になることからも、それは実感できます。
以上をまとめると、
ミニピルは混合ピルと較べて排卵抑制力は劣るけれども、
その欠陥を子宮内膜が着床条件を持たないことで補っているといえます。
ミニピルの服用法
上に記した3つのメカニズムをご覧頂くと、このメカニズムは途切れることなく継続する必要があることに気づくでしょう。
休薬すると、子宮頸管粘液のバリアもなくなりますし、輸卵機能も回復します。
そこで、ミニピルでは休薬を取らずに毎日服用を継続します。
この点が通常の混合ピルとの相違点です。
さらにもう一つの違いは、服用時刻です。
通常の混合ピルでは12時間以内の飲み忘れならば、避妊効果に影響はありません。
これは排卵抑止をメインに考えているからなのです。
ところが、ミニピルでは12時間の飲み忘れがあると、3つのメカニズムは急速に失われてしまいます。
飲み忘れの許容限界は3時間程度と考えられています。
つまり、ミニピルでは厳格な定時服用が求められます。
蛇足その1
通常ピルでは、ピルに含まれるエストロゲンと黄体ホルモン剤は相互作用により、低用量で排卵を抑止します。
エストロゲンを含まないミニピルでは、内因性エストロゲンとの間で相互作用の関係ができています。
卵胞が成長するとエストロゲンが分泌され、エストロゲンが分泌されると黄体ホルモン剤の作用が強められ、
卵胞の成長が抑止されるという微妙なバランスです。
このバランスを保つためにも厳格な定時服用が必要なのです。
蛇足その2
超低用量ピルは明らかに混合ピルの一種ですが、ややミニピル的な性格を持っています。
休薬期間が7日より少ないピルがあったり、より厳格な定時服用が求められたりします。
蛇足その3
レボノルゲストレル法の緊急避妊で用いられる用量は、ミニピルの1ヶ月分にも相当する量です。
これほどの高用量が必要なのは、内因性のエストロゲンを頼りにしない方法だからです。
蛇足その4
通常ピルの飲み忘れ対応では、ほぼ排卵リスクだけを考慮します。
ただ低用量ピルには当然にミニピル同様、子宮頸管粘液の分泌や輸卵作用の抑制作用もあるわけです。
このような作用を考慮し始めると複雑すぎて、マニュアル化はできません。
しかし、リスクが高いだろうなとか、低いだろうとかの目安には使えます。
蛇足その5
低用量ピルから見ていると、子宮頸管粘液や輸卵作用の抑制は、"おまけ"のようなものに見えます。
しかし、ミニピルから見ると、これは結構捨てたものでないのがわかります。
飲み忘れ対応に、「翌日朝夕各1錠」というのがあるのですが、受精卵を輸卵管に釘付けにすると説明されていたものです。
ミニピルのメリット・デメリット
ミニピルは欧米でもマイナーなピルです。
ミニピルは厳格に服用すれば、通常の混合ピルに匹敵する避妊効果があります。
しかし、厳格に服用しないと急速に避妊効果が低下するので、実際には通常の混合ピルよりも避妊効果は下がります。
さらに、ミニピルをマイナーな存在にしている理由があります。
それは服用初期の不正出血です。
通常の混合ピルでも服用初期には不正出血のトラブルはありますが、ミニピルでは数ヶ月の間不正出血が続くことがあります。
この点がミニピルの普及を阻んでいる最大のネックとなっています。
一方、ミニピルのメリットは、副作用が非常に少ないことです。
エストロゲン依存性の副作用である血栓症リスクの増加や吐き気などの症状は、ほとんど見られません。
そのため、喫煙者や35歳以上の女性も服用できます。
また、抗生物質と併用しても効果の低下はありませんし、授乳中も服用できます。
つまり、ミニピルはほぼ誰でも服用できるという特徴があります。
さらに、生理を極端に軽くします。
多くのミニピルユーザーの生理は、おりものシートですむ程度になりますし、その軽い出血も見られないことがあります。
しかし、この2つの薬剤は避妊効能を承認されていませんから、日本には「ミニピル」はないというのも間違いではないのです。
それは、いわば避妊薬ではない「ミニピル」でした。
経口避妊薬としてのミニピルのある国と、避妊薬ではない「ミニピル」の国日本を比較してみましょう。
ミニピルの特徴を書きました。
それを読んでいただけるとわかるように、ミニピルは治療目的ユーザーに人気のあるピルです。
欧米では35歳を過ぎると混合ピルの使用を続けるか、再考します。
その際に治療目的を持つ女性に勧められるのが、ミニピルです。
ミニピルは35歳を過ぎてもずっと使い続けることのできるピルです。
欧米でミニピルという選択肢を可能としているのは、ミニピルが避妊の効能だけをもつ薬だからです。
ミニピルは避妊薬なので、女性なら誰でも利用できます。
授乳中にミニピルを使用し、ミニピルファンになる女性も少なくありません。
喫煙者がミニピルを選択することも少なくありません。
ミニピルは避妊薬としての広い裾野を持っているために、治療目的ユーザーも利用できる状態になっています。
一方、ミニピルを治療目的に限定した日本で、「ミニピル」は普及したでしょうか。
治療目的を持つ女性にもほとんど使用されなかった、というのが実情です。
ピルの治療目的利用が急速に進むのは、避妊効能が認可されたこの10年のことです。
避妊目的ユーザーの裾野が広がって、はじめて治療目的利用が認識されるようになったのです。
ところが、今の日本では再び治療薬化の企てが進行しています。
避妊薬でない「ピル」が生み出されています。
欧米のミニピルと日本の「ミニピル」が辿った軌跡は、治療薬化が治療目的ユーザーの利益にならないことを示しています。