ピルの服用基準~使って良い女性・使ってはだめな女性

WHOの「避妊法使用に関する医学的適用基準(WHOMEC)」では、経口避妊薬の使用の可否に関して、4つの分類を提起しています。

そこでは、不適用基準(または禁忌)だけではなく、適用基準についても述べています。

① ピルの使用によって『利益がリスクを上回る状況』

  1. 【使用制限なし】=WHO‐1
  2. 【リスクを上回る利益】=WHO‐2

② ピルの使用によって『リスクが利益を上回る状況』

  1. 【利益を上回るリスク;原則的禁忌】=WHO‐3
  2. 【容認できない健康上のリスク;絶対的禁忌】=WHO‐4

年齢、分娩歴、既往歴、肥満度、喫煙状況等を確認し、適用基準のどの分類に当てはまるか把握してみて下さい。

世界保健機関(World Health Organization)

WHOは、人間の健康を基本的人権の一つと捉え、その達成を目的として設立された、国際連合の専門機関(国際連合機関)です。

避妊法使用に関する医学的適用基準(WHOMEC)

使っても良い女性~ピルの使用によって『利益がリスクを上回る場合・状況』

問題なくピルを使えます

使用制限なし:WHO-1

  • 年齢-初経~40 歳未満
  • 出産の有無-未産および経産
  • 分娩後-授乳していなければ 21 日を経過後
  • 中絶後-人工妊娠中絶の直後から使用可
  • 子宮外妊娠歴
  • 骨盤内手術歴
  • 安静臥床を要しない小手術
  • 静脈瘤
  • 片頭痛以外の頭痛-軽度または重度
  • てんかん-肝酵素誘導薬を服用していない場合可
  • 腟出血-不正、大量または遷延性の疑いがない場合
  • 子宮内膜症
  • 良性の卵巣腫瘍
  • 重度の月経困難症
  • 絨毛性疾患a -良性および悪性
  • 子宮頸部外反症
  • 乳房疾患-良性の乳房疾患または乳癌の家族歴
  • 子宮体癌または卵巣癌
  • PID-現在または最近 3 カ月以内
  • STD-現在または最近 3 カ月以内、腟炎または STD のリ スクが高いもの
  • HIV/AIDS-HIV・AIDS に罹患、HIV・AIDS のリスクが高いもの
  • 住血吸虫症・骨盤結核および非骨盤結核・マラリア
  • 貧血-サラセミア、鉄欠乏性貧血
  • 抗生物質-リファンピシンおよびグリセオフルビンを除く

注意深い経過観察が必要です

リスクを上回る利益:WHO-2

  • 年齢-40 歳以上
  • 母乳栄養-分娩 6 カ月経過後から可
  • 喫煙-35 歳未満
  • 肥満-30 を超える BMI
  • 妊娠時の高血圧歴
  • VTE-第 1 度近親者にある場合
  • 安静臥床を要しない大手術
  • 表在性血栓性静脈炎
  • 既知の高脂血症
  • 心弁膜疾患-合併症を伴わない
  • 片頭痛-限局的症状のない 35 歳未満の女性
  • 腟出血-検査前に重度の疾患の疑い
  • CIN および子宮頸癌
  • 乳房疾患-診断未確定の乳房腫瘤
  • 糖尿病-NIDDM および IDDM、血管疾患なし
  • 胆嚢疾患-無症候または胆嚢摘出によって既治療
  • 胆汁うっ滞歴-妊娠による
  • 鎌状赤血球症

使ってはだめな女性~ピルの使用によって『リスクが利益を上回る場合・状況』

極力使用を避けてください

必要な場合は、注意深い経過観察と定期的な検査等が必要です

利益を上回るリスク:WHO-3

  • 母乳栄養-分娩後 6週~6カ月の間で母乳栄養が主体のもの
  • 分娩後-21 日以内
  • 喫煙-35 歳以上で 1 日 15 本未満の喫煙者
  • 高血圧-BP が測定できない場合には高血圧歴
  • BP が測定できる場合は適切に測定されたBP
  • 収縮期140~159mmHg および拡張期 90~99mmHg の高値
  • 片頭痛-限局的症状のない 35 歳以上の女性
  • 乳房疾患-乳癌の既往歴があって3年間再発がない
  • 胆嚢疾患-症候性で内科的に既治療または罹患中
  • 肝硬変-軽症で代償性
  • よく使用する肝酵素に影響を及ぼす薬剤b-抗生物質(リファンピシンおよびグリセオフルビン)および特定の抗痙攣薬(フェニトイン、カルバマゼピン、バルビツール酸系薬剤、プリミドン)

原則使用禁止です

容認できない健康上のリスク:WHO-4

  • 母乳栄養-分娩後 6 週以内
  • 喫煙-35 歳以上で、1 日 15 本を超える喫煙者
  • 心血管疾患-動脈系の心血管疾患に関する種々の危険因子があるもの
  • 高血圧-収縮期 160mmHg、拡張期 100mmHg を超える BP
  • VTE-罹患または既往歴
  • 長期の安静臥床を要する大手術
  • 虚血性心疾患患者
  • 脳卒中
  • 心弁膜疾患-肺高血圧合併、心房細動、亜急性細菌性心内膜炎歴
  • 片頭痛-年齢に関わらず局在性神経徴候を有する者
  • 乳房疾患-乳癌患者
  • 糖尿病-腎症、網膜症、神経障害または他の血管疾患があるか、20 年を超える糖尿病
  • 肝硬変C-重症で非代償性
  • 肝腫瘍-良性または悪性

ピルとタバコの関係

  • AIDS(Acquired Immunodeficiency Syndrome)=後天性免疫不全症候群
  • BP(Blood Pressure)=血圧
  • CIN(Cervical Intraepitherial Neoplasm)=子宮頚部上皮内腫瘍
  • OC(Oral Contraceptives)=低用量ピル
  • HIV(Human Immunodeficiency Virus)=ヒト免疫不全ウイルス
  • IDDM(Insulin Dependent Diabetes Mellitus)=インスリン依存性糖尿病
  • NIDDM(Non Insulin Dependent Diabetes Mellitus)=インスリン非依存性糖尿病
  • PID(Pelvic Inflammatory Disease)=骨盤内感染症
  • STD(Sexually Transmitted Diseases)=性感染症
  • TB(Mycobacterium tuberculosis)=結核
  • VTE(Venous ThromboEmbolism)=静脈血栓塞栓症
  • WHO(World Health Organization) =世界保健機関

ピルの服用を中止すべき症状・状態

服用を中止すべき症状 疑われる疾患

  1. 片側または両側の下肢(ことに‘ふくらはぎ‘)の痛みと浮腫⇒血栓性静脈炎
  2. 胸痛、胸内苦悶、左腕、頚部等の激痛⇒ 心筋梗塞
  3. 突然の激しい頭痛、持続性の頭痛(偏頭痛)、失神、片麻痺、言語のもつれ、意識障害⇒出血性・血栓性脳卒中
  4. 呼吸困難(突然の息切れ)、胸痛、喀血⇒肺塞栓
  5. 視野の消失、眼瞼下垂、二重視、乳頭浮腫⇒ 網膜動脈血栓症
  6. 黄疸の出現、そう痒感、疲労、食欲不振⇒ うっ滞性黄疸、肝障害
  7. 長期の悪心、嘔吐⇒ ホルモン依存性副作用、消化器系疾患
  8. 原因不明の異常性器出血⇒ 性器癌
  9. 肝臓の腫大、疼痛⇒肝腫瘍
  10. 体を動かせない状態、顕著な血圧上昇が見られた場合等⇒静脈血栓症への注意

服用を中止すべき他覚所見、検査所見

  1. 血圧の上昇
  2. AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇
  3. 理学的所見の異常
  4. 子宮の増大
  5. 乳房腫瘤の出現
  6. 貧血の出現
  7. 出血・凝固系検査の異常
  8. 性器癌検査の異常
  9. 体重の急速な増加
  10. 血中脂質の増加
  11. 原因不明の異常性器出血