GRID

Principal-in-charge : Fujino Takashi

Project team : Gunji Emi Tsutsumi Yasuhiro

Consultants : Emiko Sukegawa/Structural Design firm Accurate

General Contractor : Kenchikusha Shiki Inc.

Design : 2015.11 - 2016.10

Construction : 2017.05

Structural system : wood

Story : 2 stories

Total floor area : 120.37㎡

Program : house


GA JAPAN 151 100 details

GA HOUSES 153

SHINKENCHIKU JUTAKUTOKUSHU 2017.7

SHINKENCHIKU JUTAKUTOKUSHU 2017.1

GA HOUSES 146

グリッド

担当 : 藤野高志 郡司絵美 堤康浩

構造設計 : 助川恵美子/アキュレート構造設計事務所

施工 : 建築舎四季

設計期間 : 2015.11 - 2016.10

竣工 : 2017.05

主体構造 : 木造

階数 : 地上2F

延床面積 : 120.37㎡

用途 : 住宅


GA JAPAN 151 100 details

GA HOUSES 153

新建築住宅特集2017年7月号

新建築住宅特集2017年1月号

GA HOUSES 146


人間のための座標

私たちの外側には大きな世界が広がっていて,それは様々な物事の総体としての森羅万象である.無数の他者を鏡として自己の存在を確かめることは,生きる喜びでもある.だから私は,外の環境を感受し「今はいつで,ここはどこか」が分かる建築を作りたいと思っている.だが建築は,空間の広がりの一部を切り取り,内部化する宿命にある.私的空間である住宅は,油断すると密室になりかねない.大きな窓や中間領域を介して外へ開こうと試みるが,それは住まい手にとっては,建築家によって与えられた受動的な自由に過ぎないのかもしれない.では能動的な自由とは何か.その答えをグリッドという空間形式に託すことにした.

グリッドは,緯度と経度,都市の街区,建築の柱割りなど大面積を均質に分割するのに合理的で,昔から建築家の有用な道具となってきた.近代建築の先駆けである温室や工場の純粋な合理主義は人間の外にあったが,その数理的規則性を通して世界を把握してきたのもまた人間である.私はここに可能性を感じる.

敷地は分譲されたばかりの若い土地で,新しい文脈の上書きを待っているように見えた.まっさらな状況に一つの構造を与えるため,グリッドを用いた.敷地全体に45度に振った網を掛け,35の交点に自然物と人工物を並置する.

設計図上に規則的な交点が出現した時点で,住まい手と建築家,双方の意識上に網かけが行われ,仮想の座標を通じて敷地全体を共有してきた.設計段階の空間認識は,実際の空間が立ち現れ,住まい手の生活がはじまった今もなお生き続け,グリッドは環境を把握する道具であり続ける.この家では,縦長の大窓によって住まい手は地面から空までの広がりの中に置かれるが,たとえ壁の向こうが見えなくとも,存在するであろう交点に導かれ,意識は建物の内外を行き来する.

目には見えない虚の座標は,想像力によって伸縮もする.それは建物の壁を抜け,整地された区画の群れを超え,この町,関東平野へと,どこまでも平らに続く風景を駆け抜けるくらいの射程をもって,意識の広がりに自分を据えるグリッドである.現実世界の実の座標,意識上の虚の座標,そのどちらのひろがりの中にも自らを定位する手助けとなる建築である.今はまだ幼い木々は交点に根を張り,時間をかけて上へ生長するだろう.虚の空間を導く交点は,実の存在である.