Withered go picture

Principal-in-charge : Fujino Takashi

Design : 2009.10

枯れていく絵

私たちは,絵が枯れていく姿を見たかった.日を追って茶色く乾燥していく過程を.

この絵は今,瑞々しい緑色をしている.けれど,時間が経てばやがて枯色と葉脈の相異の集合体になる.午後の木漏れ陽,夕焼け雲,波の音,猫のまどろみ,あの人の笑顔….私たちの気持ちを豊かにする風景は,時間が経てば変化してしまう儚いものだ.二度と見ることの出来ない,消えてしまうものの贅沢さがある.私たちが欲しいと思ったのは,森の様々な木々の葉っぱの一枚一枚の持つ葉脈と色の美しさだった.

自然の形や色は美しい.自然のものだから美しいのは当たり前という前提を取り払いたくて,なるべく人工的な扱い方をした.4センチ角に葉を切り刻み台紙の上に並べ,LEDで照射する.様々な葉脈,様々な光沢,様々な色合いが標本的に並ぶ色とりどりの模様になるが,生物であるが故,どんどん枯れ色褪せていく.

しかし枯れてしまった絵は,まだ緑だった頃の姿を想像させる強い力を持っている.作品横のネームプレート内の写真がそれを手助けする.絵の中に一枚だけ埋め込んだ造花の葉.自然の中にあっていつまでも変化しない人工的な緑色に,私たちのサインを記した.


担当:藤野高志 Takashi Fujino

設計期間:2009.10